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転移国家日本  作者: 狐ン
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二作品の同時執筆はできるんだろうか……。昔の小説もプロローグしか出来ていない……。むむむ……。

大陸暦4215年1月13日 ローゼン王国 首都ローゼリア 王城

 

 ローゼリア、王国の首都でもあるこの街は、三方向を山に囲まれた海辺の街だ。建物は白で統一され、訪れた者は皆口を揃えて美しいと話す。その街の最奥、王城、王の間にて、

 「……バルカよ、あの白竜の正体は分からぬのか?」

 国王ローゼン4世は、宰相であるバルカに尋ねる。

 「いえ、いまだに正体は掴めておりません。また、白竜の速度はワイバーンよりも速く、飛行限界高度よりも高高度を飛行しており、竜騎士隊をもって倒すのは非常に困難とのことです……」

 二人が話しているのは、5日前、この国の首都に現れた国籍不明騎の事だ。北東から現れ、首都上空を我が物顔で飛び回ったあと、再び北東に去っていった。諜報部からの報告によると、北のミューレ帝国でも同じ種類の竜が現れたという。


 「うーむ、よりにもよって、何故今なのだ。帝国との戦争が避けられなくなっているのこの時期に。」

 ローゼン4世は苛立ちを隠せない。帝国とは、ミューレ帝国と呼ばれる、ローゼン王国の北側にある国だ。ローゼン王国のあるマテリカ大陸において、近年侵略戦争を繰り返している危険な国だ。


 「失礼します!ローゼリア港の沖合いに灰色の巨大艦が現れました!」

 突然、扉が開かれ、若い兵士が息を切らして飛び込んでくる。

 「なんだと⁉海軍は、何をしている!それで、詳細は!」


 「大きさは目測150メートル、約20ノットで航行していました。」

 「なっ、そんな大きさで20ノットも出せるのか!」

 「海軍が臨検を行ったところ、『ニホン政府の使節団』を名乗っており、領空侵犯の謝罪と我が国との会談を求めています」

 「どうしますか?国王。」

 それだけの艦を作れるなら、そのニホンとやらは自分達より高い技術を持っているのだろう。実際、ローゼン王国の軍艦は木造の帆船に申し訳程度の魔法機関と側面に固定砲が四機ずつあるだけだ。北方三国の1つ、アルタシア王国の旧式の魔法弓発射機を登載した艦が二隻、さらに発射機の原理が分からず量産不能という状態だ。もし彼らが覇を唱えるのなら、この国は滅亡するかもしれない。しかし、彼らは礼儀をわきまえているし、こちらに謝罪を申し入れている。

 

 「よし、私が直接会談しよう」

 国王はそう宣言する。

 「いや、しかし」

 「国の一大事じゃ。儂が動かんでどうする。それに、今のままではこの国は確実に滅亡する。」


 その後、宰相バルカは、翌日に、ニホン政府使節団とローゼン王国との会談を行う旨を伝えた。


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 西暦2033年1月1日、史実より12年遅い東京オリンピックが無事に終わり、熱が冷めてきた日本に天変地異が襲った。僅かな揺れの地震が起きた後、突如周辺地域や人工衛星との通信が絶たれたのだ。政府は地球連合軍内の、旧自衛隊部隊を運用する事を決定し、韓国の地球連合軍に物理的接触を図る為に佐世保から護衛艦を出港。

 同時に全国の自治体や企業と連携し、物資の輸送や情報共有等を実施し、国民の混乱を抑える事に成功する。この時の政府の対応はかつてない程に迅速だった。


 しかし、朝鮮半島が有るはずの場所に陸地は無く、またどういうわけか、宗谷海峡が10キロ程に狭まっていた。そこで、政府は日本が別の惑星、若しくは世界に転移してしまった事を悟る。その後、自衛隊によって周辺の探索を行った結果、便宜上新樺太と呼称された北海道北部の島の東側に大陸を発見。政府は現地民族との接触の為、日本から北西に1000キロ離れた周辺で最も大きい港町に使節団を派遣した。


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 ニホンの軍艦が現れてから4日。王国政府は大混乱に陥っていた。艦から降りてきたのは黒服と緑の斑点模様の集団であり、彼らはこの国との国交樹立を求めてきた。その艦を一目見ようと港には沢山の人が集まり、警備隊が出動している。

 王城、会議室にて

 「……よって、儂はニホン国に使節団を派遣する事を決めた。」

 ニホンとの会談、そして王前会議を経て、王は決断した。

 「しかし、相手は異世界から来たなどと言っている国ですぞ。本当に信頼できるのでしょうか。」

 バルカは不安を隠せない。

 「儂は問題ないと考えている。そなた達も見たじゃろう。あの品々を。彼らが日常品と言っていた物でも、我々の物より数倍も質がよかった。」

 王の決意は固く、3日後に使節団をニホンの軍艦(護衛艦と言うらしい)あきづきに乗艦させ、派遣する事が決定した。


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西暦2033年 大陸暦4215年1月15日

地球連合東アジア州日本地区 州都(日本地区首都)東京


 時は少し遡る。かつて世界最大級の都市だったこの街も、今は転移による電力不足の為、計画停電中だ。その為明かりは疎らで、何処か寂しさのある街になっている。そのなかで、明かりが点いている数少ない建物の一つが旧首相官邸だ。今、ここでは日本と地球連合職員による、閣僚会議が開かれていた。

 「では、これより閣僚会議を始めます。」

 日本地区の行政長官である、西岡総理が話しだす。

 「まず、各省庁からの報告を聞こう。」

 「農林水産省です。まず、転移によって海外からの輸入が途絶えた為、ここままだと3ヶ月程で食料が尽きます。」

 「経済産業省です。同じくエネルギーについても、既に計画停電を実施していますが、近いうちにガソリンや石油が空になってしまいます。」

 

 この二つについては最大の問題の問題だ。既に全国で節電や計画停電を行っている他、食料については配給制になり、連合軍と一般のトラック、それと貨物列車を使って輸送している。そのせいでスーパーやコンビニや飲食店は大打撃を受け、多くが休業している。

 

 「外務省です。現在我が国から派遣した外交官二名がローゼン王国政府と接触に成功し、国交樹立に関しての交渉をしています。また、北西のミューレ帝国とも交渉中ですが、まだ現地政府との会談どころか、政府関係者との接触まで漕ぎ着けておらず、かなり難航しているようです。また新樺太についてですが、どうやらミューレ帝国の領土で、クトロ島という名称らしいです。」


 「うーむ。あわよくば領土に組み込んで資源確保ができないか考えていたが、やはり無理か。」

 総理は黙り混む。かなりの問題発言だが、状況が状況なので、咎める者はいない。


 そして、ここからは地球連合側の報告が始まった。地球連合東アジア州代表の、葛西が話し出す。


 「地球連合東アジア州代表の葛西です。日本が異世界に来たと言う事で、地球連合憲章第5条2章の規定に基づき、我々が独自に判断をしました。明後日を目処に、現在連絡が取れる陸、海、空、全ての連合軍を日本政府に貸し出す事が決定しました。」


 その決定に、日本側がざわめく。いくら代表が日本人とはいえ、地球連合は世界中を広く統治する組織だ。そのため、細かな対応が日本より遅くなる。ローゼン王国との接触前に地球連合は独自外交の権利も認めているため、この決定は実質的に、日本に今後の判断を一任させるようなものだ。


 「連合軍東アジア指令所長官の矢木です。これまでに二回、北から未確認機が我が国の領空に侵入しました。戦闘機のパイロットが目視で確認したところ、未確認機はヨーロッパの伝承にあるような「竜」に酷似した生物との報告がありました。」

 一同が騒然とする。薄々分かってはいたが、前世界にはいない生物が存在している。これでここが地球では無いことが確定した。

 「…………では、引き続き食料とエネルギーは節約を、外務省はローゼン王国との国交樹立に向けて引き続き交渉をしたください。それと、狭まった宗谷海峡を何がこえて来るか分かりません。連合軍は海峡の封鎖準備をしてください。指揮系統の移行と同時に発動します。竜やその他未確認生物については生態が分からない為、静観ということでお願いします。問題ないないですか?葛西さん。」


「問題ありません。」

総理の決定に、葛西も同意する。こうして、この日の閣僚会議は終了した。


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 大陸暦4215年1月17日 ローゼリア港

 「では、これからあそこに見えます、護衛駆逐艦あきづきに乗って、日本の地方都市、佐世保市までご案内します。」

 ローゼリア港にて、ローゼン王国外交官のマイカル、ラース、テヘロの三人は、日本政府の外交官、鈴原から説明を受けていた。もう一人の外交官は、先にあきづきに戻っている。


 あきずきは、1999年、史実より10年早く建造された護衛駆逐艦だ。2013年の地球連合設立と同時に出来た、地球連合海軍への戦力提供時に大きく改修された艦艇で、建造から34年立った今でも現役の艦艇である。


「しかし、スズハラ殿。この行動計画はどうも現実味を帯びていないが?此処からサセボ港まで1000キロ以上離れている。その距離を一日で行くなど本当に可能なのか?それにサセボからトウキョウまで半日で行けると言うのも嘘を言っているようにしか聞こえない。」


その質問に鈴原は

「はい、可能です。勿論何か有ればきちんと脱出は出来ますよ。そんなことはそうそう起きませんけどね。この港は水深が足りないので、此方の小型ボートであそこにまで移動します。」

 すると、沖の船から、何かが高速で近づいてきた。

 「なんだ、あの船は!帆が無いのにあんな高速で走っているぞ!」

 驚くマイカル達。

 「あれはディーゼル機関と言うもので動いています。簡単に言うと、あの中で起こした爆発の力で、スクリューを回しているんです。」

 鈴原が答える。


「うーむ……。すごいですな。」

 マイカルが、力の籠もっていない声で答える。あまり理解出来ていないようだ。


 こうして、マイカル達外交官は、あきずきに乗り込み、謎の国ニホンの首都、トウキョウを目指すのだった。


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