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転移国家日本  作者: 狐ン
第二章
22/27

札幌条約

大陸歴4215年10月15日 札幌


 「この規模の都市なのに……首都ではないのか……?」

 街を埋め尽くす巨大なビルを見て、帝国の使節団の一人であるケリークは思わずそう漏らす。帝都より明らかに発展した都市が首都では無いという事実に、トウキョウを見てみたいという思いと、帝国は戦う相手を間違えたという後悔の念が同時に湧き上がる。

 「少しでも帝国に有利な条約にしなくては……。」

 ケリークはそう決めて、用意された車に乗り込んだ。


 講和会議の場所に札幌が選ばれた理由は二つある。一つは、迅速に使節団を送り届けるため、少しでも近い場所にすること。もう一つは、札幌には冷戦時代に極東キューバからの核ミサイルを警戒して作られた地下シェルターがあった事である。短期的な避難を想定している東京のシェルターよりも大きく、万が一の時にも長期間生活できるため、こちらが選ばれたのだ。


 会議場についたケリーク達は、さっそく部屋に入る。部屋の中には、すでに日本側の担当者がいた。

 「本日はよろしくお願いします。担当の鈴原です。どうぞお掛けください。」

 そう言われ、ケリーク達は席に座る。


 「ではさっそく。これが、日本がミューレ帝国に求める内容です。」

 そう言って差し出された紙をケリークは見る。上質な紙に大陸共通語で書かれた内容を読んだケリークに怒りがこみ上げてくる。そこにはこう書かれていた。


○ミューレ帝国は、日本国、アリュータ王国、ローゼン王国及びクワリッタ政府に計6兆5千億ミューロン(420兆円)の損害賠償を金に変えて行う。


○上記が不可能な場合は、日本国、アリュータ王国、ローゼン王国、クワリッタ政府に、国家予算の5%を10年間支払う。また日本にクワリッタ王国東部所属未定地域及びコルタル島を割譲する。


○ミューレ帝国の状態によっては、賠償金額を引き下げる検討を行う。


○ミューレ帝国は、日本国、アリュータ王国、ローゼン王国、クワリッタ政府を独立国家として保証する。


○ミューレ12世は、貨物船練馬襲撃事件の被害者及びクワリッタ王国民に正式に謝罪する。


○ミューレ帝国は、これまでの奴隷政策をやめ、日本の指導の元で奴隷階級の権利向上に務めること。


 「なんだこれは!皇帝陛下が蛮族に頭を下げるなどするわけ無いだろうが!」

 ケリークは思わず声を荒げ立ち上がる。すぐに自分の立場を思い出して座り直すケリークだったが、鈴原は呆れていた。


 「これは絶対に外せません。それとも、賠償金の額を増やしましょうか?」

 鈴原は淡々と告げる。


 「い、いえ……。それは……。」

 そんな事は出来ない。6兆ミューロンという、帝国が100年掛かっても使い切れない額を金で払ってしまえば、世界中から金がなくなってしまう。


 日本側の態度を見る限り、方法は一つしかない。即ち、帝国は日本に領土を割譲し、身を削って賠償金を支払い続ける事である。何故何もない土地を日本が欲しがるのか理解出来なかったが、賠償金は税金を上げればなんとか対応出来る。


 勿論、日本としてもそんな額の金が欲しい訳ではない。むしろ本命は領土の割譲であり、そこに眠る膨大な量のレアメタルと、転移によって大量発生した失業者に職を与える事だった。また、賠償金額の引き下げをちらつかせ、間接的に帝国に干渉する事も計画されていた。




 数時間に及ぶ協議の後、ミューレ帝国は日本及び周辺国との終戦に合意する事となる。帝国は日本に一部領土を割譲し、翌年4月1日から日本の管理下に移行する事が決定。賠償金についても、翌年から支払いが始まることになった。


 ミューレ12世は翌年4月を目処に来日し、東京で被害者遺族に謝罪を行う事になり、クワリッタ王国でも時期を調整して謝罪を行う事とした。また、日本とミューレ帝国は国交を結ぶ事も同時に決まった。


 そして、年末を目処に地球連合軍はミューレ帝国内での治安維持活動を終わらせて帰還する事になる。


 こうして、4215年10月15日、札幌条約が締結され、日本-ミューレ帝国戦争は日本の勝利で終戦を迎えたのだった。

これで帝国戦争編はおしまいです!


これからも頑張っていきます!!

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[一言] お~とうとう終戦!!
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