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転移国家日本  作者: 狐ン
第二章
18/27

リンカルスク空港奪取作戦

今回は短いです。

モチベが……

大陸歴4215年8月7日 明朝 旧日本海西部

 東から徐々に白み始めた空を、5機の輸送機と、3機の戦闘機が爆音を纏って切り裂いて行く。

 『間もなく海岸線に到着する。各機、敵対空兵器に注意せよ。』

 無線から連絡が入り、パイロット達は気を引き締める。


 5機の輸送機には、空爆用の爆弾と、空港制圧の為の空挺部隊や支援車両が詰め込まれていた。

 やがて、編隊はマテリカ大陸の海岸に到達する。海岸から数十メートルに渡って砂浜が続いている。そして、その先は見渡す限りの湿地と森林が広がっており、地平線から顔を出した太陽によって、赤く照らされていた。


 『作戦空域に入る。各機、戦闘準備!』

 目標となるリンカルスク市が見えてきた所で、再び無線が入る。

 リンカルスク市は、シーニ河と呼ばれる大河が二股に別れる地域の、北2kmにある河岸段丘の上に作られた都市だ。街から河に向かっては畑が続いており、非常に見通しが良い。街には河側には立派な城壁があるものの、その他三方向の城壁は簡素な物となっている。そして、目標となる空港は川が二股に別れた先の三角州に位置していた。


 すると、空港から数十騎の竜が上がってきた。帝国領での初めての戦闘が行われようとしていた。


同時刻 リンカルスク市 帝国陸軍兵舎


 「やはり、この時期の朝焼けは美しいな。」

 兵舎のバルコニーで、駐屯部隊の隊長であるトカンは朝食を食べながら空を眺めていた。しかし、その途中で、トカンは空に違和感を覚える。

 「ん?なんだ、あの点は……?」


 トカンが疑問に思っている間に、その点は徐々に大きくなっていき、やがて、その輪郭が見え始める。

 「あれは竜か?いや、羽ばたいていない!まさか、報告にあった日本の軍隊!」

 トカンの本能が激しく警報を鳴らす。


 「竜騎士隊に連絡!あの不明騎を追い払え!陸軍も全員出動!なにか有っても備えられるようにしておけ!」

 トカンの命令は、即座にリンカルスク空港に伝えられ、竜騎士隊は出動していった。


 が、その竜騎士隊に悲劇が襲う。輸送機を護衛していたFH-47のミサイル攻撃によって、上空に展開した全ての竜が一瞬にして肉塊に変わってしまった。


 「なっ!竜騎士隊が!!そんな……もう航空戦力がない……。」

 トカンが絶望している間に、不明騎から何かが落とされる。それは空港に設けられた厩舎に当たると、猛烈な爆発を引き起こした。


同時刻 地球連合軍輸送機

 『爆撃が完了した。これより、リンカルスク空港の制圧に入る。全員降下せよ!』

 無線の指示によって、空挺部隊が一斉に降下していく。彼らは、十分な高度に達すると、落下傘を開き、空港近くの草原に着陸する。


 そして、空挺部隊は複数のグループに別れ、空港の制圧を始める。滑走路や管制塔等、後々の利用を考え、爆撃が見送られた施設を空挺部隊はまたたく間に制圧していいった。そして、午前6時30分、空港は完全に制圧された。


ルナベース11 地下第五封鎖格納庫

 激しい爆発音とともに、コンクリートの塊が崩れ落ちる。この日、航空宇宙開発省とUEN宇宙軍は共同で基地内の調査を行っていた。目的はもちろん、日本が取得していない宇宙技術の調査である。


 ルナベース11は、UEN管理下の基地としては珍しい、民間企業の施設がある基地であった。そしてこの格納庫も、アメリカに本社を持つ大企業の()()()が所有していた。書類上は。実際には、こうしてコンクリートで厳重に封鎖され、基地職員でも僅かな人間しか立ち入りを許可されていないという、怪しさ満点の施設となっている。そうして各種検査の結果、コンクリートの破壊に問題は無いと判断されたため、今回の調査となった訳だ。


 土煙が晴れ、与圧に問題が無いことが確認されると、調査員達は宇宙服を脱ぎ、中に入っていく。


 「おい!あれを見てみろ!」

 一人の職員が叫んだ。そして彼が指を指した方を見た者たちがざわめきだす。

 「なんで、ここにこんな物があるんだ……」

 「民間企業じゃ無かったのかよ」

 「条約で廃棄された筈じゃ……」

 皆口々に騒ぐ。とくに、UEN関係者に動揺が広がった。


 夜 ルナベース11 ミーティングルーム


 「それでは、今日の調査で判明した事の再確認を行う。」

 予定された一通りの調査を終え、調査員達はミーティングルームに集まっていた。


 「今回の調査で判明した事は、格納庫に保管されていた物品である。内容は、ボールイン社製キネティック弾KB-26が約1万発、発射装置が20機見つかった。詳しい調査が必要だが、1989年製の物が多く発見された。」


 「知っての通り、この兵器は第三次世界大戦後期に米国で開発され、ネパールの山岳地帯を中心に73発を投下した記録が残っている。その後、1992年のクマシ条約によって廃棄されたとされている。が、こうして残っていたわけだ。」


「保有会社の方は何か分かっているんですか?」

 調査員の一人が質問する。


 「会社の情報は殆ど残っていなかった。恐らく、米政府か、ボールイン社のサーバー辺りにでも入っていたんだろうな。これは、基地内での情報保管義務に明らかに違反している。基地職員も知らないとなると、恐らく現アメリカ地区政府、もしくは旧米国政府の関係者が一枚噛んでいる可能性が高いだろうな。あの会社自体、ペーパーカンパニーかもしれん。」


 「日本政府の要請に応じて、我々が使用する可能性があるのでしょうか?」

 また別の調査員が質問する。彼はアフリカ出身で、祖国を失った"被害者"の一人だった。


 「現状、日本政府の体質から考えて、その可能性は低いだろう。ただ、発射機に異常さえなければ、使用自体は可能と考えられる。弾頭はただの金属の塊だし、ドッキングポートは現在使われている物と共通だからな。」


 「では、本日のミーティングはここまでとする。解散!」


 こうして、発見されたキネティック弾の情報は日本政府に渡され、優先度は低いものの、ある程度の規模の調査が定期的に行われる事となった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです! [一言] 帝国がぼこぼこになって行くのがとても見たいです!! 続き期待して待ってます!! モチベよ上がれぇ!!!
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