表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移国家日本  作者: 狐ン
第二章
16/27

戦争の足音

前回の話を大幅に書き換えました。日本は帝国と講和していません。

大陸歴4215年 7月28日 ミューレスカ城


 この日、レーファは皇帝に呼ばれ、ミューレスカ城にやって来ていた。突然呼ばれた為、最初は戸惑ったレーファだったが、相手が皇帝のため、直ぐにそこに向かった。


 「お呼びでしょうか、皇帝陛下。」


 レーファは謁見の間の扉を開ける。その先には、皇帝が、きらびやかな椅子に座っていた。


 「よく来てくれた、レーファよ。今回呼んだのは他でもない、ニホンについてだ。確か、お主はニホンの者の対応していたな。」


 「はい。その通りでございます。ニホンの愚か者は、未だ帝国の力を理解していませんが。愚かにも帝国に向って、戦争を止めるように言ってきました。」


 レーファに限らず、上層部の高いプライドによって、日本の正確な情報は入ってきていなかった。もしくは、知っていても周囲の目を気にして言えなかったり、日本との間に広がる原生林や山脈等によって、物理的な移動が殆ど無かった事が挙げられる。そのせいで、帝国は日本の力を正確に知ることが出来ていなかった。


 「そうか、良く分かった。既に知っていると思うが、余は日本に対して、民族浄化をする事を決めた。よって、その事を今日、日本に伝えて欲しいのだ。」


 「おお、陛下。ついに日本に裁きを下されるのですね。」


 レーファは、皇帝の言葉に感激する。


 「分かりました。皇帝陛下のお言葉を、伝えてまいります。」


 レーファは謁見の間を出て、自身の職場に戻る。その後、レーファは日本の外交官を第一外交局に呼び出した。




二時間後 第一外交局


 レーファは、会議室のソファにどっかりと座っていた。本来なら、戦争についての話を敵に伝える必要もないが、なにより皇帝陛下の命令なので、素直に従っていた。


 「お久しぶりです。レーファさん。」


 会議室のドアが開かれ、笹岡と野口が入ってくる。レーファは、二人を粗末な椅子に座らせる。それは、この二国の力の差を思い知らせようとしている様にも見えた。そして、会議が始まった。


 「今回はなにがあったのですか?念の為聴きますが、日本の要求については……」


 「要求など飲む訳がないだろう。断る。」


 レーファは笹岡の話を遮るように話す。その事に、笹岡は顔が顰める。


 「お前たち日本人は、帝国を舐めすぎている。お前たちは皇帝陛下の怒りを買った。皇帝陛下のご慈悲が分からぬ者はこの世に要らない。」


 「なっ、何を言って……。」


 笹岡は、レーファが突然発した、罵倒に驚愕してする。


 「お前たちの王は、自分は安全だとでも思っているのか?それとも、先の戦闘に勝った事で思い上がっているのか?甘いな。帝国の力はそんな物ではない。お前たちの愚かな考えが、自らを滅ぼす事になるのだ。」


 「愚かな日本人よ、ミューレ帝国は日本に宣戦布告し、全日本人を抹殺する事を決定した。」


 レーファの口から飛び出た言葉に、二人は絶句していた。


 「宣戦布告ならまだしも、全日本人を抹殺だと!?お前たちは、日本人に民族浄化をする気なのか!!」


 「そうだ。お前たちもそのうち殺される。帝国軍は全力をもって、あらゆる兵器を使って日本に攻め入るからな。だが、お前たちは今は殺さないでおこう。日本に進行した帝国軍によって日本人が殺された後、一番最後に殺してやる。これは私からの慈悲だ。」


 「そうか……。」


 笹岡は、あまりの怒りによって、無表情になる。


 「お前たちは自分の立場も知らずに、民族浄化を宣言するとはな……。お前たちほど幼稚で、愚かなヤツと交渉したのは初めてだよ……。」


 笹岡は席を立つ。


「お前たちのような蛮族とは、二度と交渉したくないね。」


 笹岡と野口は、第一外交局をあとにした。




同日 日本


 その日、JNA(日本報道協会)のニュースの視聴率は、80パーセントを超えた。日本人が不安をもって見守る中、そのニュースは繰り返され、軍事に知識の無い者は震え上がる。


 『マテリカ大陸北部にある、文明国を名乗るミューレ帝国は、日本に対して宣戦布告し、民族浄化を宣言しました!!繰り返します。ミューレ帝国は民族浄化、つまり全日本人を虐殺すると宣言しました!!総理は一時間後に緊急記者会見を開く模様です。私達はいったいどうなってしまうのでしょうか!!』


 ニュースキャスターは、困惑しながら話す。ニュースでは戦力比や帝国の兵器の性能等が紹介され、不安を煽る。


 『今回の宣戦布告により、日本は第二次世界大戦後、87年ぶりに戦争状態となりました!!繰り返します、日本は87年ぶりに戦争状態に突入しました!!ミューレ帝国は民族浄化、全ての日本人を殺すと宣言しています!!日本は、どうなってしまうのでしょうか!!』


 長きに渡って保たれた平和は、一方的な理由によって終焉を迎えた。




一時間後 首相官邸


 『間もなく記者会見が始まります!!』


 87年ぶりに突入してしまった戦争。しかも、相手は日本人全員を殺そうとしている。この緊急事態の中の、総理は記者会見を開く。


 険しい表情をした総理が姿を表すと、一斉にフラッシュが焚かれ、顔を照らす。総理が壇上に上がると、ざわついていた空気は静まり返る。総理は、ゆっくりと話し始めた。


 「皆さん知っての通り、ミューレ帝国は日本に対して、宣戦布告をしました。我々は何度も何度も交渉し、戦争を回避しようとしてきました。しかし、結果は戦争という、最悪の結果になってしまいました。しかし、我々は今でも平和への道を模索しています。


 ミューレ帝国は、日本に対して民族浄化、つまり、全日本人を殺すと言ってきました。私はこの事に対して、はっきりと宣言いたします!!日本政府は持てる力の全てを使い、日本人を彼らから守ります!!


 日本政府は地球連合軍に対して、日本を守る為にあらゆる手段を使う事を要請しました。これには、ミューレ帝国内の基地や工場も攻撃対象に入ります。また、日本と同盟関係である、ローゼン王国、アリュータ王国にも支援を要請し、必要な物資を優先して輸送して貰うことも決定しています。


 日本政府は、全力をもって、必ず皆さまを、ミューレ帝国の民族浄化から守り抜きます!!絶対に、守り抜きます!!!!」


 その後、いくつかの質問が行われ、記者会見は終了した。


同時刻 駐日ローゼン王国大使館


 駐日ローゼン王国大使館は、日本と本国、双方からの要請により、ローゼン王国人の引き上げを決定していた。既に引き上げ船の手配もしてあり、数回のピストン輸送によって輸送する事になっていた。


 「日本国内のローゼン王国人に連絡を取れ!!急ぐんだ!!いつ帝国との戦闘になるか分からないぞ!!」


 日本に帝国が攻めてくるとは考えづらいが、万が一があってはならないとして、急遽出された命令により、大使館は地獄の忙しさとなっていた。


 現在、日本国内には約1万人のローゼン王国人がいる。その殆どは商人で、携帯電話(日本国内の外国人や海外で活動する日本人向けに政府が格安で提供している)を持っている。しかし、金のない商人等は携帯電話を持っていない者もいる為、連絡作業はスムーズには進まなかった。


 また、これと同じ事はアリュータ王国等でも起こっており、既に日本各地の港では、引き上げする者で長蛇の列が出来ていた。




日本 新潟市


 『日本政府より、避難勧告が発令されました。市民の皆様は、最寄りの避難所に、避難してください。』


 市内の防災無線から、避難勧告が流れる。万が一を考えた日本政府の決断により、旧日本海に面している地域の全域に、避難勧告が発令されていた。


 避難所に通じる道は大混雑し、自治体は避難所の開設に追われていた。内陸部の親族の家に避難する者も多く、高速道路や国道も大渋滞を起こし、警察は誘導に追われていた。


 さらに政府は、ロシア内戦時に整備された核シェルターの改築工事を急ピッチで進めていた。完成には約一ヶ月かかるが、シェルターは頑丈なうえに巨大であり、これが完成次第全員をそこに避難させる計画だった。


 同様の事態は日本各地で起こっていた。沿岸部の企業は軒並み休業となり、街からは人々が消える。


 突然宣戦布告を受けた日本だが、着実に準備を進めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ