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転移国家日本  作者: 狐ン
第二章
13/27

大東洋海戦

大陸歴4215年7月3日


 「これより、総理の会見が始まります。」


 貨物船練馬での大虐殺事件は、全ての日本人に知れ渡った。そして同時に、日本と国交を結んだ全ての国も知ることとなる。


 普通の国なら戦争になっていただろう。しかし、相手は大陸最強の国、ミューレ帝国である。その強大な力の前には、400人程度は目を瞑るだろう。


 だが、今回の相手は日本である。日本の国力を知る各国は、帝国が日本を見誤ったのだろうと考えていた。


同時刻 在日ローゼン王国大使館(旧英国大使館)


 大使館の一室で、大使であるマイカルを含めた職員達は、食い入るようにテレビを見つめる。


 『総理が入ってきました!』


 アナウンサーの声が流れると同時に、シャッター音がパシャパシャと鳴り、総理大臣がスーツ姿で入ってくる。その顔は険しく、笑顔は微塵もない。


 ざわついた空気が静まり返ると、総理がゆっくりと話し始める。


 『皆さん知っての通り、2日前にローゼン王国南方海域で、貨物船練馬がミューレ帝国海軍に拿捕されました。外務省は、拘束された日本人を開放するように要求しましたが、信じられない事に…………彼らは、非道なやり方で日本の民間人を虐殺しました。しかも、その様子を強制的に見させられた外務官の証言によると、彼ら帝国兵は、それを楽しんでいるようでもあったと……。


 私達は、この蛮行に目を瞑ってはいけません!こんな非道なやり方で一般人を殺害した今回の首謀者には、必ず罪を償って貰わなくてはいけない!!


 現在、練馬を襲ったミューレ帝国海軍は、旧日本海に展開しつつあり、海上封鎖を行う事がわかってます。どうやら、日本の食料輸入を絶ち、国民を餓えさせようとしているようです。そして、その次に襲われるのは、ローゼン王国とアリュータ王国であり、そこにも日本人を含め、多くの人々が住んでいます。相手は戦列艦ですが、それでも大きな驚異となる事に変わりはありません。


 日本政府、並びに地球連合は、日本人の命を守る義務があります!!そして、同盟国であるローゼン王国とアリュータ王国も、一方的な侵略を受けてはいけません!!


 我々は平和を愛しますが、話の通じない、平和を壊そうとする相手には断固として対応します。


 私は地球連合東アジア州との協議の結果、日本の内閣総理大臣として、連合陸、海、空軍に対して、同盟国と協力し、日本人を守る為にあらゆる措置を講じる事を決定しました。』


 その後、様々な質問が行われ、会見は終了した。


 「最近忙しいと思ったら、こういう事だったのか……。」


 「こりゃあ、帝国と戦争になるぞ!」


 「うちの国の防衛は大丈夫なんだろうな……。」


 テレビを見ていた大使館職員は、様々な感情をもって、中継を観ていた。




シオン王国 王都 ショムロン・ハダッシュ


 「号外!号外だよ!」


 街中で、号外が配られている。その見出しを見たシオン王国の人々は、目を丸くする。


 『日本国とミューレ帝国ついに直接衝突!!!!』


 「おい、どっちが勝つと思う?」


 「マテリカ大陸最強の国だぞ?ミューレ帝国が勝つに決まってる。」


 「いや、なんでも日本はものすごい兵器を持ってるみたいだぞ?」


 「聞いた話だと、王国からは日本に観戦武官を送る決定をしたらしい。夕方のニュースでその話をやるんじゃないか?」


 「帝国の人海戦術には、多少兵器の性能が良くても敵わないよ。」


 「噂だと、帝国は大量のアーティファクトを発掘したらしい。下手したら、聖アルカ神国レベルの戦力になってるかもしれないぞ。」


 シオン王国では、どちらが勝つか予想が出来なかった。




聖アルカ神国 港湾都市レレイ 冒険者協会


 ラネッタ大陸にある世界最強の国、聖アルカ神国。その中で最も古くから栄えていた都市、レレイ。そこにある冒険者協会では、酔っぱらいの冒険者達が話していた。


 「なあ、聞いたか?ミューレ帝国と、非文明国の3カ国連合が戦うらしいぞ?」


 「どうせ正規軍同士の戦いだろ?俺たち冒険者に回ってくる仕事は、戦後の後片付けだけさ。」


 「連合に入っているニホンとかって国は、まだ冒険者協会が進出してないらしいぞ。帝国に占領された後も、現地に行くのは大変かもな。」


「まあ、見習い冒険者の金稼ぎくらいには丁度いいだろうな。」


 冒険者達には、東の端で起る戦争は全く意識されていなかった。




大陸暦4215年7月4日 ミューレスカ


 この日、第一外交局では、レーファが日本との会談を行っていた。いきなり会談を申し込んで来たが、国の存亡がかかっている為、特別に許していた。


 「急な会談だが、帝国は寛大だ。お前たちの行動には目を瞑ろう。それで、話はまとまったか?結果を聞こうか。」


 部屋に入って来るなりそう言い放ったレーファに、笹岡は怒りを堪えながらも話し出す。


 「これからお伝えする事は、日本政府並びに、地球連合東アジア州の正式な決定であり、地球連合憲章における紛争解決法に従ったものになります。」


 笹岡は公文書をレーファに渡す。


○現在大東洋に展開している全ての軍を即時撤退させること。


○アリュータ王国への軍事行動について、公式に謝罪し、賠償を行うこと。


○日本人虐殺に関して、公式に謝罪し、賠償を行うこと。


○今回の事件の首謀者を、日本の刑法に基づいた処罰を行うため、身柄を引き渡すこと。


 「なっなんだこれは!!いくら蛮族とはいえ、無礼にも程があるぞ!!」


 レーファが叫ぶが、笹岡は気に留めず、話し続ける。


 「これらの内容が確約されなければ、日本は実力をもって、帝国軍を排除します。また、今回の首謀者の中に、あなたも入っている事をお忘れなく。」


 「お前たちは馬鹿なのか?お前たち日本人は、皇帝陛下のご慈悲によって生かされているのだぞ?帝国がその気になれば、殲滅戦だ。それとも、お前たちは戦争で国民を滅ぼしたいのか?」


 「いいえ、私達は平和を愛しています。それは、これから先も変わらないでしょう。しかし、その平和を乱し、一般人を虐殺するような犯罪者に対しては、断固として対応します。」


 「なにが犯罪者だ!この蛮族め!海上封鎖をすれば、日本は食料が無くなることは分かっている。軍人も王族も一般人も、皆等しく餓死していく恐怖を味わうがいいさ。帝国の国力を勘違いしているお前たちが降伏するのと、国民が餓死するは、どちらが早いかな?」


 レーファは、嗤いながら話す。


 「分かりました。では、日本は実力をもって、貴国の海軍を排除します。その後、再度会談としましょう。日本の意思は強いことをご理解いただきたい。」


「それと……、これは個人的な意見だが、帝国は日本の事を知らなさすぎる。他国からの情報は入ってないのか?帝国からの文章には、日本の王がどうとか、王に変わって国をどうするとか書いてあったが、日本は王制じゃないぞ。…………日本の紹介用に作った資料だ。どうせ、前に渡したやつは読んでないだろ?これを読めば、日本がどんな国か分かるようになっているはずだ。もしくは、日本に使節団を向かわせるかだな。」


 笹岡はそう言って、資料を渡す。こうして、会談は終了した。


3日後 大東洋(旧日本海)


 雲一つない快晴の中、それは海面スレスレを飛んでいた。海の色に溶け込むように青く塗られた機体が10機飛んでいる。


 FH-47は、地球連合空軍の主力戦闘機だ。10機のFH-47は、海面から10メートルの超低空を、マッハ0.9の亜音速で飛んでいた。


 目標は、北海道沖に展開する、帝国海軍の戦列艦20隻だ。現在、この20隻を含め、帝国海軍の戦列艦や、竜母と呼ばれる、ワイバーンを海上で運用する為の艦を含めた、1000隻が各地に展開して。その中で特に密度の高く、地上配備型のミサイルが置かれている山口から遠いこの地域に、多くの戦闘機が割り当てられていた。


 『攻撃開始時刻まであと1分。総員、戦闘準備を開始せよ。』


 司令部からの通信が入る。


 やがて、地平線の先から、敵が見えてきた。


 『攻撃を開始せよ』


 命令と同時に、40発のミサイルが発射され、敵に向かって飛んでいった。


 正確に着弾したミサイルは、戦列艦を炎で包み込む。


 そして、20隻の戦列艦は、船体を真っ二つにして、あっけなく沈んでいった。


 『ミサイル全弾着弾。目標沈没。これより、第2迎撃地点へ移動する。』


 『了解。救助は海軍が行う。』

 FH-47のパイロットは通信を行い、次なる目標に向けて進路を変更した。


これが、帝国海軍と地球連合、事実上の日本軍との最初の衝突になった。




同時刻 山口県 とある海岸


 この海岸には、敵を殲滅するため、ミサイル発射用の車両が並べられていた。100両以上のそれが海岸にならんでおり、付近の住民は不安をもってそれを眺めていた。




 『攻撃を開始せよ。』



 司令部からの通信に、隊員達は緊張をもって、発射スイッチを押す。それと同時に、大量のミサイルが、噴煙を上げて発射される。


 『衛星誘導に切り替え!』


 その通信と同時に、ミサイルは衛星誘導に切り替わる。合計800発にもなるミサイルは、上空を通過中のステーション35の操作によって、それぞれが別の目標に向かって飛んでいった。


同時刻 戦列艦カヤート


 「1000隻の戦列艦を使ってやる事は海上封鎖か……。暇だな。」


 カヤートの艦橋で、船長のアデンは呟く。この船は現在、新潟沖にいた。日本軍との戦闘になると思ったが、とくに攻めてくる様子も無かった。


 「ん?何だあれは?」


 ぼんやりと歌海を眺めていた艦長は、違和感を覚える。よく見てみると、小さな『なにか』が、高速で接近していた。その直後、約10km先にいた別の艦から爆発が起る。


 「なんだ!?まっまさか!日本軍の攻撃か!?総員戦闘準備!あの飛んでくるやつを撃ち落せ!」


 直感的にそれを悟った艦長は、直ぐに命令を出す。艦の側面につけられた大砲が発砲するが、相手には全く届かない。


 「クソ!なんて速さだ!」

 アデンは、艦橋の手すりに拳を叩き付ける。


 「ダメです!敵を打ち落とせません!」

 船員が叫ぶ。

 「仕方ない。全員退避だ!」


 アデンが命令を出した直後、ミサイルはカヤートに直撃した。


 「うわぁぁあ!!助けてくれ!!!」


 アデンは爆発に巻き込まれる。吹き飛ぶ船員と、船の破片が、彼が最後に見た光景だった。


 ミサイル攻撃によって、帝国海軍の艦は殆どが破壊された。生き残ったのは、位置の関係等で迎撃されなかった50隻のみだった。しかし、日本はそれらの艦を見逃した訳では無かった。残りの艦を沈めるため、既に護衛駆逐艦が出港していた。

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