第2章☆ノメドの正体
第2章☆ノメドの正体
古風な外国製の城が曲がりくねった道のはるか向こうにそびえ立っていた。
「ここを歩くの?」
海斗がぶつくさ言った。
「私の言うことを聞くならあっという間にお連れしますよ」
ノメドが海斗に言った。
「聞く聞く!」
軽いノリで返事した小学3年生は、ノメドが呼び寄せた黒い雲に乗って、あっという間に飛んでいってしまった。
「海斗!ノメド!」
私は青ざめて呼び止めようとしたが、二人の姿はかき消えてしまった。
「陽子。海斗を助けに行かなくては」
デルムントがシルクハットに片手をかけて、白い霧を呼んだ。
ピューイ。
デルムントの口笛で馬車がやって来た。
「さあ、乗って」
「ええ」
馬車に揺られながら、デルムントは優雅に懐から水晶球を取り出して中を覗き込んだ。
「きゃあ。なに、あれ?」
私は水晶球の中に、弟を捕まえた恐ろしい黒い生き物の姿を見た。
「ノメド。nomed ・・・逆から読むと?」
「Demon デーモン?」
「そう。彼は13日の金曜日の合わせ鏡の悪魔」
「・・・あなたは?」
「時空間を旅する者」
デルムントは、13日の木曜日と14日の金曜日が交差した時空間に呼び寄せられたのだという。禍転じて福となす。彼がいることはかなりのラッキーだと思われた。
「陽子。諦めなければ、必ず海斗を取り戻してもとの世界へ帰れるよ」
「わかった。デルムント、私に力を貸してね」
「もちろん」
口の端を上げて微笑むデルムント。とても心強い味方。
馬車は霧を抜けて、古城の前にたどり着いた。
「海斗!必ず一緒に帰るからね」
私はそびえる城を見上げて誓った。