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やはり教師は向いてない  作者: 分福茶釜
2/10

リード

あの重々しい話の後、河口さんは俺の部屋へ案内してくれた。その部屋の家具や所持していたものまですべて日本にいた時と同じであった。

「もし足りないものがいってくださいね。可能な限りの援助はさせていただきます。明日の8時にお迎えにあがります。宮殿や学校のことについてご説明いたします。今日はごゆっくりお休みください。」そう言うと河口さんは出ていった。

脱力しベッドの上に横たわった。

今日一日あった事を整理する。

「異世界で急に先生かぁ。実習もまだ終わってないのに…父さんも母さんも元気にしてるだろうか。こんな事ならもっと親孝行しとくんだったな。」そんな事を考えているうちに寝てしまっていた。



翌朝8時 部屋をノックする音が聞こえた。

「河口です。お迎えに上がりました。」

「今行きます。」そう言ってネクタイを締め扉を開いた。


「昨日はよく休めましたか?」

「はい、よく眠れました。」

「本当に適応力があるんですね。今まで何にも候補を連れてきましたが、混乱して自殺してしまったり、無理やり日本に帰りたがろうとする人たちがほとんでした。」

「だだを捏ねれば帰してくれるんですか?」少し嫌味になってしまったと思って河口さんの顔を見たが、河口さんは優しい笑みのまま首を横に振るだけだった。


「まずこの世界の種族についてお話しいたします。ここリードには獣人族、機械族、水棲族、吸血族、龍種の5つの種族が存在します。」

「言葉は全種通じますか?」

「ええ。言葉は全員に通じます。文字もリードでは共通ですが、日向さんには覚えて貰わないといけませんね。」

「そう言えば、こっちに来てから文字を見てないですね。」

「文字の種類は1種類だけなのですぐに覚えられますよ。」

「年齢はどのくらいですか?」

「歳は…かなり複雑なので……

基本的には小学生1年生レベルからの授業で問題ありません。」

「確かに機械族に年齢は無さそうですね。」

そう言って河口さんの顔見ると、少し険しい表情をしていた。

「河口さん?」

「あぁ、すみません。もう一つ大事なお話をする必要があります。」

「もう多少のことでは驚きませんよ。」

「心して聞いてください。

ここリードでは戦争が行われていたのです。異種族間の争いです。領地、資源、権威などを巡って起きた争いでした。」そう言いながら北側の窓のカーテンを河口さんが開けて、見た景色に驚きと恐怖を隠しきれなかった。

「そ、そんな…」思わず腰が抜け近くの椅子に力無く座り込んだ。

それは見渡す限り焼け野原であった。あるのは煙の匂いとあれた大地のみ。

「この戦争を終結させたのが、神種から派遣されたティナ様です。本来ティナ様の力で大地や死人を復活させられるはずでした。しかし、酷く、複雑化してしまった戦争を終わらせるために必要なエネルギーが莫大すぎました。ティナ様は力のほとんどを使い切ってしまわれたのです。それにより大人たちは復興作業にかかりきりになってしまい、魔法や技術、剛腕を屈指しても元に戻るのに50年はかかると言われています。その間子供たちをどうするのか?その問題にいくつもの論争がありました。」

「そこで学校を作ることにしたと?」

「ええ。その通りです。ティナ様の提案でこれからも戦争を無くしていくには異種族間のわだかまりを排除し、教養をつけ、戦力ではなく教養で世界を作っていかなければならないとおっしゃったのです。そこで異種族にも授業をできる方を探していたわけです。」

「それで俺が…

授業に関してですが経験も浅く俺程度の知識で大丈夫でしょうか…」

「あなたを観察する中、対応力の他にもう一つ教師には欠かせない能力がある事に気付きました。」

「そんなのありましたか?べ、別にロリコンじゃないですよ??」

「あなたがロリコンでないことは存じております。

あなたの能力 それは面倒見の良いところです。」

「……(そうかなぁ?)」

「あなたは恐らく気づいていないでしょう。それも観察してる中でわかります。他人の面倒を見ることはとても難しいことです。年齢が違うのならなおさらです。でもあなたにはその優しさがある。だから、日向敦志君!

あなたをリード大学校の教師として、子供たちに教育を施す任務を命ずる。」

「…わかりました。不束者ですがこの任務謹んだお受けいたします。」そう決心した矢先、甲高い声と共に小刻みに走ってくる足跡と小さな影が見えた。

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