5.回復魔法を体験したけど、最高でしたよ。でも怪我は痛いのでしばらく遠慮します(泣)
今週から日曜投稿です
「ちょっ、ヨシユキ!?どうしたのその怪我!」
「いや、ちょっと森でね」
ギルドに戻ると俺の状態を見たメルドが驚きカウンターから出て駆け寄ってくる。
門を潜るときもジルダンさんに驚かれたなぁ。
メルドの驚きの声が大きかったためほかの冒険者の視線を集めてしまっている。
「も、森!?森で何があったの!?」
「グリーンウルフだよ。まさかあんなに出てくるとは思わなかった」
「グリーンウルフ?でもグリーンウルフ程度、今のヨシユキなら楽勝だと思ったんだけど……」
「いや、流石に7体同時は死ぬって。まぁ死ななかったんだけどさ。それより治療できるとこ知らない?全身痛くて、てか左腕感覚無くて……」
「っ、だ、誰か回復魔法使える人いませんか!?」
メルドはギルド内にいた冒険者に呼びかける。
すると3人の魔法使いっぽい人たちがやってくる。
「駆け出しか?ひどい傷だな。見せてみろ」
「私も手伝うわ」
「私も」
3人の冒険者が回復魔法をかけてくれる。
こんな時だが初めて見た魔法にかなりテンション上がってるよ。
なんかこう、キラキラ―ってなって、傷口がホワァ……って温かくなるんだ。
俺も魔法使ってみたいんだけど、まだ戦い方も安定していないし魔力を育てるよりも他のステータスを育てておきたいからな。
気配察知スキルとか危険察知スキルとかとって分かったのだが、スキルってポイントでとると自然とそのスキルの使い方が頭の中に浮かぶんだよな。
つまりさ、魔法とかのこと知らなくても自然と魔法の使い方がわかっちゃうんだよ。
それってなんかつまらないじゃん。
だからこれからはスキルポイントでスキルをとるのは控えよう。
レベル上げとかには使うけどね。
「どうもすみません……あの、これ少ないですけどお礼です」
アイテムボックスからお金を取り出し三人に3000マインずつ渡す。
「こんなに貰ってもいいのか?この程度の回復魔法なら教会で1000マインもせずに受けられるぞ?」
「そうなんですか。まぁこれくらいならいいんですよ。まだ貯金はありますから」
「そう?じゃぁありがたくもらっておくけど」
「早めに教会に行って治療を受けなさいよ?小さな傷は治せたけど、その左腕は流石に本職の人たちじゃないと治せないから」
「どうもありがとうございます」
「あぁ、報酬ももらったし、お互い様だ」
3人の冒険者はそう言って仲間のもとに戻っていく。
そんな冒険者たちをかっけぇとか思いながら見ていると隣で鼻をすする音が聞こえる。
「お、おぉ?どうしたんだメルド?何泣いてんだ」
「だ、だってさ……今回ヨシユキに森での依頼を進めたの僕だし、僕がヨシユキに進めなかったらヨシユキにこんな怪我をさせなかったのに……」
「何言ってんだ。確かに進めたのはメルドだけど、受けると決めたのは俺だ。だから怪我をした責任は俺にある。俺が弱くてちゃんと情報収集してなかったからこんなことになったんだ」
「…………ごめん、ヨシユキ」
「良いんだって」
「……それで、さっき話を聞いて気になっていたんだけど、グリーンウルフ7体と戦ったの?」
「あぁ、そうだけど」
いやぁ、行く前にグリーンウルフについて調べ解きゃよかった。まさか7体も群れて行動するとは思わなかった。
「おかしいね……。グリーンウルフって大体1匹で行動することが多くて、群れていたとしても3匹ぐらいのはずなんだけど……」
「そうなのか?まぁそこら辺のことはよく分からんからギルドのほうにお任せするよ。俺は教会に行って治療してもらってくる」
「あ、そうだ。ギルドカード見せて。報酬先に払っておくから」
「おう」
今回の依頼はグリーンウルフ3体で12000マイン。1体4000マインの計算だから全部で28000マインだな。Dランクの依頼ってかなり設けられるな。
報酬を受け取った俺はギルドを後にした。
これから教会に行って治療を受けることにする。
ギルドで冒険者の人に回復魔法を掛けてはもらったのだが、小さな傷が治っただけで未だ大きな傷は残ったままだ。ちょっとした応急処置は済ませてるんだけどね。
まだ左腕動かないし結構切り傷とかあるし、ちょっと動くだけでかなり痛むんだよな。
でも何だろ。こんなに傷ついてるのに結構平気っていうね。日本にいたころにこんな傷だらけになったら大事だったよ。泣いてたね。だって傷とか痛みとかに慣れてないもん。
だというのに今の俺は痛いとは思おうが全然我慢できている。
「これ、もしかしたら不屈スキルの御蔭なのかな?」
確か精神強化とか、そんなスキルだったはずだけど。
ホント神様に貰っといてよかったな。そうじゃなきゃ今日俺死んでたよ。狼にわざと腕を噛みつかせるなんてトチ狂った作戦思いつかないよ。ビビりの俺があんな恐ろしいこと実行できるわけない。
改めてスキルのすごさがよくわかるよ。
人の精神に干渉して性格変わっちゃうんだもんな。
ちょっと間違えて狂化とかのスキルとっちゃわない様にしないと。
うっかり狂化して大量殺人とか大犯罪者とかになりたくないからな。
てなことを考えながら歩くこと数分後、教会に着きました。
「見た目は普通の教会だな。地球にもありそうだ」
異世界の教会だからもっとこう、神聖そうだったりザ・ファンタジーみたいな要素があるかと思ったけど。普通だったね。
なんか教会って入りずらい雰囲気あるよね。
入りづらい、入りづらいけど腕痛いしなぁ。
よし、行こう。
決心を固めいざ教会へ。
「………………」
そぉっと教会の扉を開け中に入ると数人のご老人が長椅子に座って熱心にお祈りを捧げていた。
なんか荘厳な雰囲気に気圧されながらもゆっくりと中を進む。
「おや、どうしまし……治療ですか?」
「え、あ、お願いします」
キョロキョロと何処で治療受けられるんだろとか考えていると年配のシスターが声をかけてくれた。それに俺がここに来た理由も察してくれたみたいだし。まぁあちこち傷ついてボロボロだから目的はすぐにわかったのだろう。
「左腕かなり酷いようですね」
「え、えぇ。ちょっと依頼で無理しすぎちゃって。あの、治療にはどれくらいのお金がかかるのでしょうか?」
「そうですぇ。金額は傷の具合で変わりますが、貴方の傷の具合なら10000マインも掛からないでしょう」
「そうですか。足りそうなので良かったです」
これで数十万マインとか言われたら道を引き返すしかなかったからな。
数万マインならまだ払える。宿代ならすでに2週間分支払っているし、まだ一週間分残ってるから今金を使い果たしても一週間以内に稼げばいいしね。
「ではこちらに仰向けで寝てください。傷の状態を視ますので」
「あ、お願いします」
俺を案内してくれた年配のシスターはすでに元の場所に戻っている。
俺はというと治療室のベットに寝かされ20代後半くらいの若いシスターに裸を見られていた。
あ、裸と言っても上半身だけだよ?
大きな傷があるのは上半身ぐらいだからな。
「これは、大分酷いですね……すぐに回復魔法をかけますので、じっとしていてくださいね」
「あ、はい」
このシスター、見た目からなり奇麗な人なんだよな。
だからかなり緊張して語頭に必ず「あ、」がついてしまう人になってしまった。
いやキツイよマジで。ここ数年、人見知りとコミュ障を直すためにバイトしたり女教師と積極的に会話して特訓していたのだが、バイト先の女性も女教師も30代過ぎて平均40代のおばちゃんたちだからな。おばちゃんたちと話すのは慣れたけどいまだに若い女性と話せないよ。
「あれ?なんだかすごい治りがいい……魔法の腕でも上がったのかな……?よし、どうにか傷口は塞げましたがあまり無理しないでくださいね?今は治りたてなので無理に動かしたりすると変な癖がついてしまったりしますので」
「あ、はい。わかりました」
シスターを意識しない様にしてたらいつの間にか治療が終わってたよ。
「あ、あの、いくらでしょうか?」
「そうですね……10000マインです」
「あ、はい。どうぞ」
「はい、丁度いただきます。これからも依頼に行かれるでしょうが気を付けてくださいね。冒険者は体が資本なんですから」
「あ、はい。ありがとうございました」
終始「あ、」を言い続けた俺は無事痛みのなくなった左腕を摩りながら教会を出る。
「いい人だったなあのシスター」
あ、別に惚れたりしてないからね?確かに奇麗な人だったけど俺の好みとは全然違うし、ましてやあんな奇麗な人が俺を好きになるとか、ありえない。
「………服買って今日は宿に帰ろ」
狼たちのせいであちこちに穴開いてるからな。適当に地味な服買って今着てる服は古着屋にでも売ろうかな。
はした金にしかならないだろうがコツコツ貯金することも大事だからな。
古着屋で適当に地味で丈夫そうな服を見繕う。
上下2着ずつ買って合計2000マインだった。1着500マイン、安いね。
後は、どうしよっかな。
あ、そうだ。
「いらっしゃい、って、昼の坊主じゃないか」
「ども」
俺は昼に剣を買った武器屋に来た。
ちょっと今回の戦いで欲しいものができたのだ。
「あ、昼に言い忘れてましたが、ヨシユキっていいます」
「そうか、俺の名はガリアだ。よろしくなヨシユキ。それでどうしたんだ?あの双剣、何か不都合でもあったのか?」
「いえ、あの剣とてもよかったですよ。あの剣があったおかげで今日も生き延びれましたし。それで、今日依頼受けて欲しいものができたんですよ」
「なんだ?防具か?」
「防具も欲しいんですが、それより投げナイフとか投擲系の武器が欲しいんです」
「投げナイフか」
今日、狼戦で投擲の有用さがよく分かった。
何か、一つでも投げられるものがあるだけで戦況は十分変えられる。
今回も剣が2本あり、片方を投げられる状態であったから生き延びれられた。だったらもっと投げられるものがあればもっと戦いやすくなるかもしれない。
あれだ、手札は多い方が良いってもんだ。
なのでガリアさんのところに投擲系の武器、投げナイフとか棒手裏剣とか、そういうものを買いに来たのだ。
「そういうものってありますか?」
「あぁ、あるぞ。こっちだ。これなんかどうだ?」
「ん……投げやすそうで良いですね。いくつありますか?」
「あー……確か30はあったぞ?」
「全部でいくらですか?」
「一本700マインだな。投げ専門であまり切れ味はないからこれくらいの値段だな」
700マインか……。
切れ味無いと言っても一般家庭にあるそこそこ切れる包丁程度には切れるから十分だろう。
俺も投げれればいいしな。
今の俺の残金24000マイン。
投げナイフ30本の値段21000マイン。
かなりギリギリだし買ったら3000マインしか残らないな……。それはちょっと不安だ。
「……20本いただけますか?」
「おう、14000マインだ」
「どうぞ」
「丁度だな。毎度」
これで俺の残金10000マイン。
やばいなぁ……。
また明日から頑張らないと。
「おかえりヨシユキ。今日は大丈夫だったかい?」
「ただいまですアイナさん。いやぁ、今日ちょっと死にかけましたよ。まぁ無事でしたけど」
「死にかけ!?ちょっ、本当に大丈夫かい!?」
宿の女将アイナさんは顔を真っ青にし俺の体に触れ怪我がないかを確かめる。
「あ、もう怪我はないですよ?教会で治療してもらったんで」
「そ、そうかい、よかった。まったく、無茶しちゃだめだよ?冒険者は体が資本だからねぇ」
「それ、教会のシスターにも言われましたよ。これからは気を付けますね」
俺も死ぬのは絶対嫌だからなぁ。あの感覚はもう体験したくない。体から何かが抜けていく感じ、あれは気持ちが死ぬほど悪いからなぁ……。
「それじゃ、晩御飯にするかい?」
「はい、お願いします」
「ちょっと待っておくれよ。今用意するから」
アイラさんの旦那さん、アルベドさんの料理めっちゃうまいんだよな。
今夜も絶品料理を食べて膨れた腹を摩りながら部屋へと戻る。
「明日からはリハビリだな」
シスターに言われた通り、無茶はしない様にゴブリン狩って貯金とSP貯めとレベル上げに励みましょう!
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