第3話 初めての活動に向けて
今回の話でとりあえずの紹介は終了となります。次回の話から雪月の高校生活が本格的に始まるのでよろしくお願いします。
次回投稿は木曜日の22時の予定
第1話→https://ncode.syosetu.com/n3821el/1/前話→https://ncode.syosetu.com/n3821el/2/
登場人物紹介
・白村雪月
頼まれると断れない男。というより男の子。まだまだ顔には幼さが残っているが精神の面では既に鋭く、物事を深く考える傾向にある。
・ハル
広報部の雪月の先輩にあたる人物。
生徒会長の美香とは幼馴染の仲。
・秋月美香
この高校をとりしきる生徒会長。
容姿は端麗で、目つきは相手に有無を言わさずに従わせるような鋭さを時にみせる。真面目なのかどうかはまだ不明。
第3話
~ハルの視点~
幼い頃の話だ。僕の幼馴染でもある秋月はとても好奇心旺盛で、活発だった。まぁ今もなのだが。
その頃の僕は今と変わらず外で遊ぶことはほとんどなく、誰かと触れ合うこともあまりなかった。そんな僕はいつも彼女に外に連れ出されていた。
「ねぇ、今日は何する。ハル。」
君はどうしていつもこんなに元気なのだろう。とよく思ったほどだ。
「ねぇ、ハル。聞いてるの。」
いつも彼女の行動力の速さには驚かされる。そんな彼女だから僕は一緒についていってしまうのだろうか。それとも僕は彼女のことが。
「ハル。もう考え事はやめてよ。早く外行くよ。行こう行こう。」
ふと気づくと彼女が僕の服の袖をちぎれんばかりに引っ張っていた。また自分の世界に閉じこもってしまったようだった。
「ごめん、ミカ。今日はどこへ行くの。」
あの頃の僕はそんな日がずっと続くような気がしていた。そしてそんな日が続くことを心の何処かで望んでいた。もちろん時が経ち、成長するにつれ、お互い変わっていくのだからそんなことはできない。彼女は今では学校の中枢部分である生徒会に所属。対する僕は決して中枢部とは言い難い広報部だ。だが、お互い離れてしまおうとも今でもそんな関係は続いているのだ。
「ハル。いま大丈夫。」
「あぁ、大丈夫だよ。どうしたの、美香。」
そうして今日もまた始まっていく。
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「あのですね、先輩。一度も広報部に入りたいとかいった覚えもなければ、そもそも先輩のこと自体、今日初めて知ったんですよ。それなのにどうして広報部に選ばれるんですか。」
目の前の童顔の少年は怒っている…のだろうか。先ほどまではオドオドとした様子を見せていたが、今では目をとんがらせてはこちらを睨んでいる。うん、可愛い。この程度の怒りならもう何回も食らってきたものですっかり慣れてしまった。
「そもそも、この部室を探す途中に色々広報部の噂聞いたんですが、元々広報部って3人で運営するんですよね。どうして今年は1人しかいないんですか。」
おやおや、怒っているようで実は少し広報部に興味が湧いているようだな。体格は少し頼りないが、容貌よし、雰囲気もよし。
「よし、完璧だ。」
「何が完璧なんですか。」
目の前の少年はすぐさまに先輩で部長である自分にツッコミを入れ、手を大きく動かしながら抗議しつつ、僕に不満の目を向けてくる。
「いや、申し訳ない。こちらの話だ。事情を説明するのはもちろん構わないけれど一つだけ先に聞いてもいいかい。」
「…。なんですか。」
少年は不満そうに言ってくる。
「色々説明する前に、君は広報部に入るのか、それとも入らないのかに関して今はどう思ってる。これは君の意思だ。別に入りたくないのならいい。無理して入ってもらっても申し訳ないしな。どう思っている、雪月くん。」
少年は少し俯いた後、顔を上げていった。
「今のところはなんだかよくわかりません、いやわからないところだけだらけです。でもとりあえず参加をしてみる……とだけは言っておきます。どうやら僕はこの広報部に借りがあるみたいなので。但し、不満や疑問を先に解決してからですけどね。」
あぁ、これは美香のやつ、先に言ってしまったな。まぁこれはこれでいいか。
「よし、なら話は早い。広報部の活動について説明することにしよう。君もそれに応じて聞きたいことは聞いてくれ。」
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~雪月の視点~
少しだけ時間を遡るとしよう。
生徒会長はあの時、もう一言伝えてきた。
「お節介だったかもしれないけれど、なんとなく君はハルに似てる気がするな。こんな初対面の相手のこと全て真に受ける必要はないけど、一つだけ言わせてもらうと、何事にも挑戦してみるといいさ。高校生活って3年間もあるけれど、進学とかするならば2年半ばや3年からは受験勉強とかで急に忙しくなったりもする。広報部はきっと君にぴったりさ。今、君が楽に生活できているのはハルのおかげでもあるからね。」
なぜかわからないけどこの言葉はどことなく自分の心に影響を与えたに違いない。生徒会長のカリスマ性故なのだろうか。
そういうこともあり、ついついハル先輩に入ると言ってしまった。これは後で反省会の案件かもしれない。というより若干既に憂鬱である。正直このタイミングでいきなり広報部に入るかどうかを振ってくるとは思っていなかったが。
「では、簡単に広報部の説明をするから、まぁメモを取りたきゃ取っていいよ。準備大丈夫か。」
ハル先輩の説明の速さに若干慌てつつも急いでポケットを探り、メモを取り出す。
「今時、紙のメモを持つ人は珍しいけど、君は持っているんだね。まぁそれはいい、話を続けよう。」
【雪月のメモ】
広報部は学校内外どちらでも起きた出来事の調査や、学校内放送の管理を主な仕事として取り扱う。
ただし実情としては大方裏側の雑務を淡々とこなす割合の方が大きい。
「なるほど、案外簡単そうに見えて難しそうですね。例えるならば舞台の黒子的存在みたいですね。」
そういうと、ハル先輩はさも楽しんでるような顔をして、
「まぁとにかくやってみるがいいさ。実は今回は初仕事になるかもしれないものが既に舞い込んできているんだ。」
という。ハル先輩の手元にはこんな文が書かれた紙があった。
テーマ「春の学園制作発表」
なるほど。始めのテーマはこの学園で行われるクラス制作か。というか、なんだか展開が早すぎるような。肝心なことを忘れているような。
「聞きたいことはこれの調査の出来によって教えることにしよう。とりあえず、がんばって。僕はいつでもこの部室にいるから。とりあえず明日の放課後にこの部室にまたきてくれ。」
そういうとハル先輩は入ってきた時と同じようにまた本を読み始めた。なんだか今日会った先輩は全員なんかしらクセが強そうに感じられる。
(続く)
おまけ 後日談 美香とハルと雪月
「いや、本当に雪月くんがあんな簡単に入ると思わなかったよ。突然転校した矢先に配属を勝手に決められた部にあっさり入るんだもん。私の魅力なのかな。いやハルの魅力だと私は思ってるけど。ハルは、やっぱりかっこいいし性格も楽しいからね。ハルはすごいな。」
男2人はそうだねと適当に相槌を打ちながら、圧倒的に美香の魅力のせいであると考えているのは、彼女の知る由もなかった。
「ねぇねぇ君たち、今私に合わせてない?」
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