第2話 広報部室
登場人物紹介
・白井雪月
人一倍心配性な面をもちつつ、案外肝っ玉が据わっている。他の同学年の子と比べると冷静さが際立っている。
・秋月美香
生徒会長。詳しくは今後の作品にて。
・ハル(仮)
広報部の長。詳しくは今後の作品にて。
次回は水曜の22時頃です。
第2話
20××年5月12日発行
記者プロフィールにて抜粋 白井 雪月
〜〜〜案外思い悩んでることがあっさり解決することがある、ということに気付き始めたのは最近のことだっただろうか。いや、もしかしたら自分は過度に物事を深く思い詰めてしまっているのかもしれない。なんだか話が脱線しているように見えるが、そんなことはない。これはあくまでも自分の今までの反省である。
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1週間経ち、友達が増えた。
この文だけ読めばなんの変哲も無いものだが、自分にとってこれは大事だった大事。もしこの文に付け加えるとしたら「何か自分から行動を起こしたわけでもないのに」、を文頭に置くだろうか。とにかく最近になって急にクラスメートを中心に話しかけられることが増え、そして少しずつ友達が増えていった。これは明らかに不自然だった。不自然と言えば、彼らの視線のこともだった。彼らは自分に対して尊敬をしているような態度を取っている。これはもしかして一種のいじめなのだろうか。と考え始めたその頃、友人がついにその疑問に対するヒントをくれた。
「雪月くん、君ってどうしてあの広報部に入れるようになったの。」
その友人の発言を聞いた雪月の頭は一瞬フリーズした。待て待て、広報部って何のことだ。そんなものまだ入った覚えもなければ、存在すら知らないぞ。
「えっと、何のことかな。まだ部活とかは決めてないんだけど。」
と答えると、その子は不思議そうな顔をしながらこう答えた。
「そんな馬鹿な。だって入学して1週間経ってすぐ貼り出されていたよ。部活勧誘の掲示板の広報部のチラシに今期の加入部員の欄に君の名前があったよ。」
とりあえず物事の真偽を確かめるためにその掲示板のチラシを探し見てみると、確かに新入部員の募集終了という文字と新入部員の名前に自分の名前が書かれていた。その後、広報部の部室を尋ねて回ったが、クラスメートはみな知らないというばかりだった。そのついでに広報部についてみなが知っている情報の断片をかき集めてみると、
広報部調査メモ
・広報部は今ある部活の中で3番目にできた伝統ある部活である
・毎年各学年1人ずつ選ばれている
(ただし今はなぜか高3の先輩が1人で収めているそうだ。)
・選考基準には定かではないが、その学年の珍しい人(?)が選ばれる。
メモを書けば書くほど、なぜ自分が選ばれてしまったのかどんどんわからなくなる。それに今までは3人で行っていた部活をなぜ今年は1人だけなのか。それだけではない。例えば、部活動の成立には通常5人以上が必要といったことをよく聞く。それなのに三人で成立する部活動とはいったい何なのか。
メモを見つつ食堂の脇のベンチで唸っていると、隣に誰かが座ってきた。慌てて自分の荷物を片付けようとすると、
「あ、片付けなくていいから。こんにちは。君が新しく引っ越してこの学校に来た雪月くんだよね。」
顔を上げると何処かで見たような気がする女子生徒が座っていた。とても姿勢が良く、真っ直ぐ見つめてくるその瞳の力強さに思わず目を背けたくなる。
「えっと、どのクラスの子だっけ。最近たくさんの人と話すからまだ覚えきれてなくって。」
その人は雪月の返事を聞くと、軽く微笑みながら口を開く。
「入学式の新入生への挨拶したこと、忘れちゃったかな。私は生徒会長の秋月美香。よろしくね。」
周りの人だけでなく、生徒会長も自分に声をかけるようになったのか。そもそも上級生の会長がなぜ。そのような思考をぐるぐるとしながら戸惑っていると、その様子を見た生徒会長は再び話し始める。
「今日君に話しかけた理由は、広報部のことさ。今ここで詳しい事情を話すと時間がかかっちゃうし、屋上にある部室に放課後行ってもらえる?」
思考がうまく回らないまま、生徒会長の勢いあってかついつい頷いてしまった。
「よし、ならまた今度機会があったら話そう。その時は私にも君の話を聞かせてね。広報部のハルによろしくね。」
そういうと生徒会長はベンチからすばやく立ち上がるとあっという間に廊下の向こうへと走り去って行ってしまった。
「まぁ、とりあえず行くか。」
とくに放課後に約束もなかったので、その部室に行くことにした。とはいえ、自分の周りで自分のことに関することがどんどん進んでいく展開に戸惑いと不安が募っていた。
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~ハルの視点~
ここは広報部室。古くからこの学校で受け継がれている屋上にある部室はかなり老朽化が進んでいる。よくある古風な雰囲気が良いというような感じであれば特に気にすることもないのだが、ただ古い故に寒暖に弱かったり、ドアの立て付けがやや悪かったりと機能性の面で低いのは中々使う側としては重要な問題である。さっさと建て直してくれと生徒会長には伝えているのだが、
「どうしてあんた1人のためにわざわざ生徒会の予算を割かなければならないの。」
と言われて今の状態となっている。この部活を存続させてもらってるだけ、あの生徒会長には感謝しなければならないのだが。
話を本題に戻そう。今日、いや今週なぜこの部室に毎日通っているかというと、そろそろ新入部員となる子がこの部室に訪れるのではないかと思ったからである。正確に言えば、生徒会長にそのようにしなさいと言われたからではあるが。なんだかんだ言って生徒会長の頼みを一度も断ったことのない僕は案外えらいじゃないか。もっと丁寧に扱ってくれてもいいのだ。
そんなくだらないことばかり考えていた時、ドアがノックされた。
「あの、ここって広報部の部室であってますか。」
ふむふむ。髪型は生まれつき茶髪のようで、高1にしては身長が低い。顔はまだまだ幼く、今成長期なのだろう。大きめの学ランがひどく目立ってしまっているのは否めない。というかこの見た目からして、わざわざこんなことしなくても、この子だったら普通にクラスに馴染めたのではないだろうか。まったく生徒会長は……。
「あの、聞いてますか。ここ部室であってますか、先輩。」
気がついた時には自分の目の前にまでその少年が来ていて驚いた。いやはやすぐ自分の世界に入ってしまう癖は未だに抜けきっていないようだ。
「ああ。その通り。ここが君の活動場所となる広報部だ。」
そしてこれから君の物語が始まる、と言おうとしたが、さすがに酔い過ぎてる気がしてやめた。いやはや、自分が思ってる以上に案外楽しんでいるのかもしれない。
(続く)