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SEASON  作者: うさみかずと
spring season
6/62

港経済大学戦2

先発西川の立ち上がりを叩いた光栄大学は、三点目を取ったところで攻守交替した。マウンド上の久留実を港経大のメンバーはすごい形相で睨みつけている。

 先頭バッターは右バッターだった。先発が分かったその日から一通りの戦略を練ってきた。初球はアウトコースに投げ込んだ。

 ズバーン。ストライク。

 球場がどよめくほどのミットの音が響く。後ろでにやつくあんこの声が轟く。

「久留美ちゃんナイスボール!」

 相手チームの驚く顔を見て私は高揚する。二球目もアウトコース低めに投げる。バットが空を切る、追い込んだ。真咲のミットはインコースに動いた。三球勝負だ。久留実はすぐに投球モーションに入って腕を振った。バッターが見送ると審判の腕が上がる。三振。天を仰ぐバッターを横目に真咲はファーストにボールを回した。セカンド、ショート、サードを回ってピッチャーにボールがテンポよく帰ってくる。ワンアウト。後続のバッターも内野フライと三振に抑えた久留実は、ベンチに戻ると上級生たちがさっそうと円陣をつくり私を円の真ん中に呼んだ。

 誰かがおろおろしている私の背中を叩く

「かけ声頼むぜ。久留美」

 詩音だった。他のみんなも急かすように久留実のかけ声を待っている。

「つ、追加点よろしくお願いします」

 よーしもう一点とろう!

 そう言ってベンチに戻る。

――マウンドに上がった時より緊張した。今のでよかったのかな?

「オッケーそんな感じ」

 真咲のその言葉で安心した久留実は、自分が先頭バッターってことに気がついて急いで準備をして打席に立った。真咲から凡退していいと言われていたがバットを持った以上やっぱり打ってみたい。狙うは初球詩音さんのようにフルスイング。

 スカッ。

 めちゃくちゃな大振りでバットが外回りした。相手の緩いカーブにまったく合わない。次もカーブ。当たらない。そして三球目。またカーブ。さすがに三球同じ所に投げられたら私でも学習する。溜めて踏み込んだ。とらえた。しかし、ボールはバットのはるか下に落ちる。二球目よりブレーキがかかっていた。分の体の回転で尻餅をつく。赤面してベンチを見ると、チームメイトは大爆笑してるし、滅多に笑わない雅までにやにやしていた。

「く~ちゃん気負いすぎだって」

「美雨さんみんなさん笑いすぎです」

「まぁ、く~ちゃんは抑えてくれればいいよ」

 このまま光栄大のワンサイドになるかと思われたが港経大も負けてはなかった。西川は、回を追うごとに調子が上がってくるし、相手打線も二順目から久留実のストレートについてくるようになった。しかし真咲のリードときわどいコースをストライクにしてしまうキャッチングでピッチャー有利のカウントを保ったまま投げられた。初回に取った三点以降、両チームのスコアボードにゼロが並ぶ。最終回の七回を向かえ久留実は最後のバッターをツーストライクまで追い込んでいた。ここまでの球数九七球。奪三振九。真咲はアウトローにミットを構える。呼吸を整える目を閉じて視界をバッターに集中させた。最後の一球。渾身の力を込めた。

 ガツ。

 力なく上がったフライを捕ろうとファースト、セカンド、サード、ショートがマウンドに集まる。

「捕ります!」

 そう宣言してグローブを構えた。

――本当は三振で締めたかったけど、でも私なりに頑張ったのかな。

 アウト、ゲームセット。

 久留実はしっかりとボールを掴んだ。整列して試合終了のサイレンが鳴って少しお腹が空いていることに気がつく。

「ナイスゲーム。ナイスピッチング」

 ダッグアウトでみんなから手痛い祝福を受ける。しかし喜んでばかりもいられない、大学野球は先に二勝したチームに勝ち点が与えられる。勝ち点を取るには明日も勝たなければならないのだ。

 身支度が済んで一度集合した。明日の予定と今日の試合のミーティングを確認して現地で解散する。

「明日の先発バッテリーはりかこと翔子でいくよ。気を抜かずに明日も勝とう以上」

 





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