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肉食系幼児

五話目


 メアリーを揶揄からかい、氷漬けにされた後、一行は『連合軍』本部がある街に向かって歩き出した。



「そういや、どうやって《モンスター》の脅威を説明するんだ?お偉いさんは絶対に軽く見るぜ」


「うん、そう思ってこれを取って来たんだ」



 レイは布で包んだ塊を懐から取り出した。



「何だそれ?」


「《モンスター》の肉さ」


「お前、抜け目ねえな」



 レイは《モンスター》に切りかかった時に、細かい肉塊を採集しておいたのだ。



「この肉塊の強度や特性を学者の人達に分析してもらって、《モンスター》の脅威を説明しようと考えてる」


「それだと足りなくねえか?」


「後はこの目だね」



 レイは自分の目を指さした。



「僕の『精霊眼』は、眼鏡を外している間の視覚情報を他者に見せることが出来る」


「ほー、便利なもんだな。ということは目が悪いわけじゃねえってことか?」


「そうなるね。日常生活を送るのに、この目は色々見え過ぎるんだ」


「お前、本当に苦労の連続だな...」



 レイはガルドの指摘に乾いた笑みを浮かべた。

 その間、メアリーとミーシャは起きた赤ん坊の相手をしていた。



「見てくださいメアリーさん、この子笑ったのです」


「そうだな、わっぱは笑うのが上手いな」



 ミーシャとメアリーは笑顔で赤ん坊と接していた。

 天真爛漫てんしんらんまんなミーシャはともかく、メアリーの変貌ぶりにガルドは両腕をさすり始めた。



「なあレイ、あれ誰だ?」


「そんなこと言ってると、また氷漬けにされるよ?」



 メアリーに抱かれていた赤ん坊は、レイの持つ《モンスター》の肉に興味を示したようで、両手を伸ばし「あーうー」と唸り出した。



わっぱよ、あれは汚いものだから触れてはならんのだぞ?」


「見せるくらいダメなのです?」


「ならん!わっぱくらいの歳の子供はすぐに病気にかかる。清潔に保つのが一番なのだ」



 レイもそう思ったので、肉を懐にしまおうとすると赤ん坊がぐずり出した。

 ミーシャやメアリーが懸命にあやすが、全然泣き止まなかった。

 見かねたガルドが提案した。



「なあ、見せるくらいいだろ?別に減るもんでもねえ」


「...分かった。レイ、《モンスター》の肉をわっぱに見せてやってくれ」



 レイは言われた通りに、肉を赤ん坊の手が届かないであろうギリギリの位置に持っていった。

 赤ん坊は肉に手を伸ばし「きゃっきゃっ」とはしゃいでいた。

 その無邪気な様子になごみ過ぎたのだろう。メアリーの抱く力が弱まったのを見計らった様に、赤ん坊はレイの持つ《モンスター》の肉に飛び掛かった。

 急に飛び込んできた赤ん坊を受け止めるべく、レイは慌てて体勢を整えた。

 それがいけなかった。

 肉への注意がおろそかになったのだ。

 レイが赤ん坊を無事受け止め、安心したのも束の間、ガルドが声を上げた。



「ガキが肉を食ってやがる!?」



 赤ん坊は小さな両手で《モンスター》の肉を器用に持ち、美味しそうに頬張っていた。



「焼かねえと美味くねえだろ!?」


「「「そこじゃねえよ!?」」」



 ガルド以外の『英雄』が一斉に突っ込んだ。






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