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偵察

二話目


 時は《モンスター》出現し、『連合軍』が組織された直後にさかのぼる。



 《モンスター》が出現したことにより『連合軍』が組織され、招集された『英雄』達は円卓を囲むように座っていた。



「はあ、面倒なことになったね」



 嘆息し過ぎて幸せが残ってなさそうな、眼鏡をかけたこの男は、人間族の『英雄』レイ・アンステッド。通称『不幸の剣聖』。



「溜息ばっかしてんじゃねえよ、幸せが逃げるぜ」



 粗暴な口振りだが相手を気遣っている、この狼の獣人の男は、獣人族の『英雄』ガルド。通称『優しい荒くれ者』



何故なにゆえわらわがこんな陰気臭い連中と...」



 明らかに不満タラタラな、頭に角の生えた美女は、魔族の『英雄』メアリー・ホーキンス。通称『氷の女帝』



「み、皆さん、よ、よろしくなのです」



 ペコペコ頭を下げ続けている、羽の生えた小さな少女は、妖精族の『英雄』ミーシャ。通称『癒しのあわてん坊』。



 この個性豊かな四人が『連合軍』の招集したそれぞれの種族の『英雄』である。

 こう見えてもこの四人、自分達の種族から絶大な信頼を勝ち取っていたりする。



 人間族の『英雄』レイ・アンステッド。その王子様的風貌と流麗な剣技から、男女問わず憧れの対象とされた。

 獣人族の『英雄』ガルド。隆起した筋肉から強さは当然として、困っている人を見ると誰でも助けてしまうその優しさが、獣人族の『強き者は全てに優しくあれ』という教えを体現しているとして、絶大な支持を得ていた。

 魔族の『英雄』メアリー・ホーキンス。攻撃魔法の手腕もさることながら、生命力が高い魔族にとって自分達を満たしてくれるメアリーの人気獲得は当然であった。つまり、魔族はほとんどがMなのである。女性からは『お姉様』、男性からは『女王様』と陰で呼ばれていた。

 妖精族の『英雄』ミーシャ。治癒魔法を行使する実力は勿論、普段の行動が見る者をほっこりさせることから、体と心のどちらも癒すマスコット的役割を持っていた。


 この四人が集まったのは顔合わせということもあるが、一番の目的は偵察であった。この時、『連合軍』は《モンスター》の実力を把握できていなかったため、少数精鋭ということで『英雄』達に頼むことにしたのだ。



「とっとと終わらせちまおうぜ。俺ぁこの後、孤児院に顔出さなきゃなんねぇんだ」


「貴様に言われんでも分かっておる。キャンキャン吠えるでない、犬っころよ」


「あぁん?」


わらわは事実を述べたまで。そんなに威嚇しては、かえって弱く見えるぞ?」



 ガルドとメアリーは、どうやらりが合わないようである。

 毛を逆立てて威嚇するガルドと、扇子で口元を隠し、澄ました顔をしているメアリーの仲裁をするべくレイが口を開いた。



「まあまあ喧嘩はそのくらいにして、偵察に行こう」



 レイは極力優しい口調で促した。これ以上の面倒事は御免であったのだ。彼は生来からの苦労人なのだ。

 その間、ミーシャは「はわわわ」と慌てているだけであった。



 《モンスター》は現在、人間領に居るという情報があったので四人はそこに向かうことにした。



 数日かけて到着した森は、ジメジメと湿気の多い湿地帯のような場所であった。

 そうなると予想通り...



わらわは帰る。このような場所は妾の好む所ではない」


「誰だってこんな場所好きな訳ねえだろ。黙って歩け」


「貴様のような不潔な獣人にはお似合いな場所だと思うぞ?」


「お前、言って良い事と悪い事があんだぜ?」



 ガルドが臨戦態勢に入ったのを見たレイは、ポンとガルドの肩を叩きなだめた。



「ガルド、今はそんな事をしている場合じゃない。メアリーも悪口くらいなら目をつぶるけど、種族の誇りを汚すような真似をすれば僕も怒るよ?」



 レイの眼光が鋭くなるが、メアリーはそっぽを向くだけであった。

 ミーシャは慌てているだけかと思いきや、真剣な顔つきでキョロキョロと辺りを見回していた。



「ミーシャ、どうしたんだい?」


「いえ、森が少し騒がしいのです。こんなこと初めてで...」


「まさか《モンスター》が?」


「それとは少し違うような...」



 ミーシャがそう言うと同時に、ガルドの耳がある音をとらえた。



「少し静かにしろ!何か聞こえる...これは泣き声か?」


「泣き声?こんな場所に誰か居るのかい?」


「赤ん坊の泣き声だなこりゃ。不味いぞ、この近くには《モンスター》が居るらしいからな」


「取り敢えず、泣き声の聞こえる場所に案内してくれるか?」



 四人はガルドが聞いたという泣き声の持ち主の元へと向かった。



 しばらく森の中を進むと、ガルド以外の三人にも泣き声が聞こえてきた。どうやら本当に赤ん坊が居るらしい。




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