プロローグ
世界は蹂躙されていた。
《モンスター》と呼ばれるその巨大生物が、その星に突如として現れた。
《モンスター》は生命体を無尽蔵に捕食し始めた。
その星では、人間族、獣人族、魔族、妖精族など様々な種族が存在し、長年に渡り、抗争や和平を繰り返してきた。
しかし、《モンスター》の出現によって、彼らには『協力』という一つの選択肢しか与えられなかった。
それほどまでに、彼らと《モンスター》の間には力の差があったのだ。
人間族より賢く、獣人族より怪力、魔族より生命力に溢れ、妖精族より魔力を持つ。
種族それぞれの長所を《モンスター》は凌駕した。
当然、一つの種族では対処できるはずもなく、それぞれの種族の王達は会談を設け、《モンスター》に対抗することを目的とした『連合軍』なる組織を設立した。
『連合軍』には、それぞれの種族の『英雄』と呼ばれる猛者達を筆頭とし、種族問わず多くの兵士が招集された。
全種族の存続を賭けた《モンスター》との戦いは、10年間という長期戦を強いられた。
『連合軍』の攻撃は《モンスター》に通じたが、兵士を捕食することによって回復してしまう。
ジリ貧であった。
そこで一発逆転を狙い、最大火力で一気に殲滅してしまうことにした。
『英雄』達を最前線に配置し、フレンドリーファイアを気にすることなく弓矢や魔法等の飛び道具を一斉に発射した。
結果から言って《モンスター》を討伐することは出来た。『英雄』全員の命と多くの兵士の命と引き換えに...
それでも脅威が去ったことにより、多くの者が歓喜した。「これで平和になる」と。
しかし、これで終わりではなかった。
別の《モンスター》が出現したのだ。
「これで世界も終わりだ」と全種族が絶望した時、一人の少年が現れた。
その少年は、《モンスター》を目の前に俯く人々の前でこう言い放った。
「僕が君達の『英雄』となろう!彼らの意志は僕が全て受け継ぐ!」
少年はそう宣言し、《モンスター》へと切り込んだ。
誰もが少年の捕食される姿を想像したが、そうはならなかった。
一撃、たった一撃で《モンスター》を両断したのだ。
左右に倒れていく《モンスター》を観衆は絶句しながら眺めた。
それを為した当の本人は観衆の方を向き、威嚇し始めた。
観衆は新しい《モンスター》でも出現したのかと怯えたが、そうではなかった。
「この肉は僕のだ!誰にも食べさせないぞ!」
観衆の声が一致した。
「「「それ、食うのかよ!?」」」
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