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カルテ703 石剣のバレオン その4

 北陸地方のX市のその年の夏は、カンカン照りの日が一ヶ月間近く続いたと思ったら、一日でひと月分の雨が降るというある意味辻褄の合った災厄の夏だった。酷暑に辟易していた人々は最初は恵みの雨に感謝するも、線状降水帯が居座り続けて田畑はおろか道路まで水に浸かり出し、大雨洪水警報が土砂災害注意報にグレードアップした時点で文字通り天を仰いで太陽を懇願した。


「まあ、こんなこともあろうかと、川沿いの土地とか買わないで本当に良かったですよ~。しっかし途中の道が冠水して、家に帰れなくなっちゃったのには困りましたね~。いや~、食材買っておいて良かったわ~」


 午後5時を回った本多医院の休憩室では、本多がIHコンロの上でコトコト青菜の味噌汁を作りながらだべっていた。


「どうせいつも残業するだのなんだの言って、あまり夜すぐに帰宅しないじゃないですか。それにしても今夜は本格的ですね」


 傍らで食器や箸を机に並べながら、巨乳看護師こと村井雫は大根と人参とちくわの煮物の入った鍋をチラ見した。


「こう見えても一人暮らしが長いもんで、簡単な手料理くらいは出来るんですよ~。それに、この雨だとどうせしばらくここに泊まり込みかもしれませんからね。ちょっと作り置きしておこうって腹積もりですよ」


「ちゃんとシャワーには入ってくださいよ。それにしても、雷がひどいですね」


 雫が指摘する通り、先ほどから雨音に混じって遠雷の轟くゴロゴロという音が薄気味悪く暗い窓越しに響いている。


「だんだん音が近づいてくるのがメリーさんみたいで嫌ですけどね~。まあ、雷が落ちることなんて滅多にないし大丈夫でしょうけど……おおっと、お米が炊けたみたいなんで、電源切ってください、雫ちゃ~ん」


「はいはい、わかりました……って、ええ!?」


 ピンポロパンポロ陽気に鳴り続ける炊飯器に彼女が近寄った途端、突如恐れていたことが起こった。

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