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カルテ698 怪球カマグ(前編) その86

 確か始まりはどこぞのハイ・イーブルエルフの村落を、グラマリール学院長とヒュミラが密かに訪れるシーンからだったはずだ。


「今更学院長やらハイ・イーブルエルフなんかを殺りに行くわけじゃあるまいし……って、ひょっとして!?」


 とある怪物に出くわし戦うも、こちらの攻撃が全く通じず、むざむざと逃げられたという話を思い出し、ミノタウロスは若干青ざめた。まさかあんな規格外の化け物と戦わせるつもりか?どう考えても勝てるとは思えなかった。


「ああ、確かにお前の考えている通りだ。我々は私と学院長が遭遇して取り逃がした強敵こと、球体カマグなる魔獣を討伐しにいく。といっても殺すわけではなく、生きたまま捕獲してくるようにとのことなので、難易度は極限的に高い任務となるだろうな」


「きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅ球体カマグ!? あのあの触れたものを皆銀の彫像に変えてしまうっていう化け物っスか!? しかも生け捕りにしてこいだと!? どう考えても無理じゃねえかよ! 責任者出てこい!」


「「「貴様不遜にもヴァルデケン皇帝陛下に出てこいとぬかしおったかケルガー!?」」」


「とりあえずうるさいから二人とも黙れ。徹夜明けの脳に響く」


 額に手を当てながらヒュミラが呻くので、二体の魔獣は無言で矛を収めた。


「確かに困難極まりない話だとは思うが、それでも帝国のためにも誰かがやらねばならん。何しろ奴をこの手に収めることは、この魔封剣を量産する未来にも繋がるわけだからな。いずれ居場所の噂は広がっていくだろうし、他の国に先んじて手に入れなければ帝国の威信にかかわる。というわけでこれ以上文句を垂れずに、むしろどうやって課題を達成するか、そのこすい頭を駆使して考えていく方が前向きな人生を送れると思うぞ」


「まあ、それもそうだわな。しっかしどうすればいいものやら……はてさて、ハーっ」


 哀れなミノタウロスはようやく白々と明けてきた窓の外に目をやりながら、あくび混じりの牛臭いため息を吐いた。

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