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カルテ687 怪球カマグ(前編) その75

「普段って、防寒具着たままで今と何も変わらないんじゃないのか? パジャマやドレスなんかに着替えることもないだろ?」


 質問の意図がわからず、ケルガーはきょとんとしていた。


「「「貴様団長殿のありがたいお言葉の意味をよく考えてみろ! 普段っていうのは団長として我々団員を指揮している時のことだろうが!」」」


「そう毎回がなり立てるなよ、ホーネルの旦那。昔のこと過ぎてつい失念しちゃってたよ。えーっと、確か……」


 そこまで言ってケルガーはようやく思い当って丸太のように太い膝を叩いた。


「そうだ、あんたいつも全身鎧着てフルフェイスマスクつけてたんだったわ!」


「やれやれ、ようやく思い出したか。つまりあれの中身は誰か外からではわからないという寸法だ」


 ヒュミラはにんまりと薄い笑みを浮かべる。なるほど、言われてみれば当時ケルガーは団長の素顔すらろくすっぽ知らなかった。あの時影武者が彼女と入れ替わっていた場合もあった、というわけだ。ということは……。


「ずりいぞホーネル! あんた最初っからこの件知ってたんだな!」


「「「当たり前だろう! 副団長たるもの団長殿の不測の事態に対していかなる対応も出来るように備えておかねばならんのでな」」」


「まあ、実際影武者の何割かはホーネルがやってくれていたわけだしな」


「そうだったんかよ!? うがあああああああああああ!」


 今更ながら真実を知ってケルガーは野太いうめき声をあげた。


「それよりも紅茶が冷えてきたからとっとと湯を沸かせてもう一杯入れろ、ボケ牛」


「ちょ、ちょっと待ってくれ団長! そいつはいいとして、まだまだおかしな点があるぞ!」


「なんだ、もう眠いから明日にしろ」


「紅茶のお代わりは飲むくせに!? てかインヴェガ帝国側の事情はわかったけど、ザイザル共和国での身代わりはどうしたんだよ!? ずーっと符学院にいずっぱりだったわけじゃないだろ!?」


 剣のごとくティーカップを振りかざすヒュミラに対し、ケルガーは新たに生じた疑問をぶつけることにした。

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