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カルテ684 怪球カマグ(前編) その72

「さて、デカフェに使用するのに適した物質についてですが、ある特徴があるんです。物質において、気体と液体の両方の性質を持つ特殊な状態のことを超臨界流体と呼びます。中々中二病心をくすぐる呼び名ですねー。これにはある温度と圧力を加えることが必要ですが、呼気などに含まれる二酸化炭素って気体の場合は酸素なんかと違って比較的簡単にこの状態になりやすいんですよ。ちょいと厄介なお話ですが、ここまでわかりますー?」


「……な、なんとなくだがな」


 あの晩本多の不思議極まる追加講義は無限にエスカレートしていったが、クラリスは何とか食らいついていった。正直言って見慣れぬ単語の連発で頭は混乱状態だったが、講師の変なジェスチャーなどのおかげで、ある程度は想像力で理解できるのだった。思うに彼は、かなり教え慣れているのかもしれない……それも、彼とは異なる世界の人々に対して。


「感心感心。で、超臨海副都心じゃなくて超臨界流体の何がいいかって言いますと、この状態の物質は気体のごとく広がり、また液体のごとく溶かすため、コーヒー豆の内部まで浸透することが出来ると同時にカフェイン成分の抽出にも優れているわけですよ。しかも二酸化炭素の場合、さっき述べた有機溶媒と違って除去するのも簡単ですし、何回でも再利用が出来るし、何より身体への害もないという、良い事尽くめの夢のような物質なんです。どうです、すごいでしょー!? これぞ魔法を超えた科学ってやつですよお嬢さん! イッツミラクル! アメージング! ブラボーおじさん!」


「わ、わかった。すごいすごい」


 勢いに押されてついオウム返しになってしまう。どうやら自分は押しに弱いようだとクラリスは悟った。


「他にも色々と長所がてんこ盛りですが、これ以上長くなると本当にヤバいしどうせ覚えられないので、この程度にしておきましょう」


「ああ……感謝する」


 すでに相当長くてヤバいのにどこ吹く風といった雰囲気で語る医師に対し、最後まで翻弄されっぱなしのクラリスだったが、かろうじてそう返したものだった。

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