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カルテ666 怪球カマグ(前編) その54

「ちなみに私の真の名はちょっとまだ言えないがな」


 彼女がそう告げながら月の化身かのような絶世の笑みを治療費替わりに見せた後も、実は医師のトークショーは終わらなかった。お礼を述べられ機嫌を良くしたのか、彼の無限無駄知識は枯れることを知らない井戸水のごとくコンコンと湧き出て危うく聴衆を言葉の海に溺れ死にさせるところだった。


「……ってなわけで、コーヒーっていうのは実は消臭効果が非常に強くって、出がらしを袋などに詰めて消臭剤に使用することが出来ます。また、この出がらしは金属の艶出しに使ったり、他にも植物の生育を妨げるという作用もあるため、除草剤などにもなるんですよ。


 カフェインってのはそれほど強力な物質でして、カフェイン酸を分解することが出来る細菌ってすげえ小さい生物は、我々の世界での超厄介な身体に有害な物質のPFASってやつをも分解できる可能性があるって近年の研究で言われています。ちなみにPFASってのは有機フッ素化合物のうちのペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称で、略語のくせに覚えにくいので、僕はパフィーニップルのアスって語呂合わせで覚えて……ってさすがにこれは余計でしたね」


「余計すぎるわ! もう十分お腹いっぱいだ! では失礼させていただく!」


 夜明けが直前にまで迫ってもはや我慢の限界だったクラリスは、本多のよくわからんくだらないネタにブチ切れそうになり、椅子を蹴って立ち上がった。


「どどどどどうてい、じゃなかったどうも申し訳ありません! あっ、でももう一つだけ良いことを思い出しましたよ!」


 ほとんどひっくり返りそうになっていた本多だったが、凝りもせずに喋り倒し続ける。


「なんだ? 後十秒だけ待ってやるから早くしろ」


「あなたさっき猫嫌いっておっしゃったけど、この出がらしは猫除けにも使われるんです! 猫ってけっこう匂いの好き嫌いがあるんですよね」


「……ほう」


 極わずかだが心に触れる何かがあったため、彼女は立ち去らずにその場にとどまり続けることを選んだ。

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