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カルテ656 怪球カマグ(前編) その44

「わざわざ慰めていただき、お心遣いに厚く感謝する。それにしても、そちらの世界では皇帝までもがコーヒーの虜にされたのか?」


 礼を述べつつ、宮仕えの身としては気になってしまい、彼女は本多に先を促した。美味なものを知り尽くしているであろう殿上人でさえもその誘惑から逃れられないとは、百戦錬磨の凄腕の淫魔よりもたちが悪すぎる。


「ええ、そのナポレオン文庫皇帝とやらはとかく逸話の多い人物でして、すげえショートスリーパーでも有名でしたが、そんなやつがコーヒーなんか飲むなよとは歴史のお勉強をしていてついつい突っ込みましたね。また、さっき出てきたヴォルテールさんなんかは一日50杯以上もコーヒーを愛飲っていうか鯨飲していたとのことで、いったいどんな胃とどんな膀胱してたんだか、医者として興味が出てきちゃいましたよ。いくら斯界の泰斗といえども欲望の前には形無しってことですかね」


「そ、そうか……凄まじいものだな」


 本多が見てきたように滔々と語る偉人たちの黒歴史に思わず引き込まれかけていた彼女だったが、外からまだ暗いのにチュンチュンという気の早い小鳥の鳴き声が聞こえてきたので、さすがに12時の時計の鐘の音を耳にしたシンデレラのごとく、眉を跳ね上げた。もう魔法が解ける時刻だ。


「ホンダ先生、貴重なお話の途中すまないが、そろそろお暇しなければ、明日、否、今日の業務に差し障る。それはあなたも同じだろうが……」


「おおっと失敬、もうそんなヤバげな時間でしたか! まあ確かに寝不足の頭で無理矢理仕事すると、いらぬミステイクがワンサカ娘のように多発しますからね。以前も徹夜明けにカルテに『13月』って書いちゃって1月か12月かどっちだよってセルフ突っ込みしたり、『体重175㎝、身長67㎏』ってあり得ない計測結果を無意識のうちに記入して後で自己嫌悪に陥ったり……うがあああああああああああああ!」


 過去のトラウマが一気に噴出したためか、本多は話しながら頭を抱え込んだ。

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