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カルテ655 怪球カマグ(前編) その43

「……というわけでさっきも言った通り僕は紅茶派なんですが元奥さんの方はといえば完全なるコーヒー派でして、しかも筋金入りのブラック党なので一緒に喫茶店にお出かけしても注文がいつも違って色々トラブルが発生するんですよね。店員さんが間違えて二人とも紅茶orコーヒーにしちゃったり、僕がミルクティーっていったせいかコーヒーにもミルクが付いてきたりして、奥さんの機嫌がどんどん悪くなっちゃうんですよ。ああ、恐ろしや恐ろしや……」


「……」


 エンジンがかかり過ぎて百万馬力化した本多の多弁さはとどまるところを知らず、まだ払暁には間があるとはいえ、彼女の方は時間が気になって仕方がなかった


「ま、まあ、大体のところは理解した。ありがとう本多先生、もう充分だ、いや、もう充分です」


「えーっ、そうですか? まだ全然説明したりませんが……でも、お役に立ったのであれば幸いです」


 話の腰を折られて不満げな本多だったが、時計の針を目にして、残念そうに過去の愚痴語りを閉幕した。


「しかし先ほどは不覚にも取り乱した姿をお見せしてしまい、我ながら恥ずかしい。まったく、潜入捜査を続けているうちにコーヒーにハマってしまうとは……これでは皇帝陛下にとても顔向けできないだろうな、ハハハ……」


「いえいえ、そんなのぜーんぜん大したことないですよ。こちらの世界だって、ありとあらゆる人間がコーヒーに魅了され、骨抜きにされちゃってますからね」


「ほう?」


 力なく肩を落として笑っていた彼女だったが、本多の優し気な言葉につい向き直った。


「例えば有名な音楽家のベートーヴェンやフランスの皇帝となったナポレオン、小説家のバルザックや哲学者のヴォルテールなどなどですね。だからあなたのようなうぶな若いお嬢さんがコーヒー沼にずっぽりしちゃうのも無理ないことですよ。ちなみにさっき挙げた偉人の方々はそれぞれコーヒーに対する名言を述べてますが、ぶっちゃけどれもコーヒーを絶賛しているだけで、見るからにカフェイン中毒っぽいんですよね……って、おっと」


 喋り過ぎた男は、再び口に自己チャックした。

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