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カルテ650 怪球カマグ(前編) その38

「というわけで、私が首尾よく持ち帰ったその予言には、符学院の新発見の他に、私を名指しで彼の地に送り込むよう記されていたため、どうすることも出来なかったというわけだ。何しろ運命神様の予言は絶対だからな」


 彼女は過去を思い出しつつ嘆息する。山頂に住む謎解き婆とやらに聞くまでもないほど他の解釈を挟む余地もない明々白々な文章は、もはや命令文書に等しかった。


「うーむ、悪いけど科学の発達したこちらの世界に住む現代人たる僕にとってはちょーっと理解に苦しむ部分もありますが、信心深いあなた方にしてみたら、それが当然なんでしょうね。南無南無」


 本多はなんとも煮え切らない表情をしながら、両手を合わせて拝む真似をした。


「相変わらず理解に苦しむのはこちらとて同じだが、これで私の側の事情は腹を割って全て余さず話したつもりだ。次はそちらも約束を守っていただこう」


「えーっと、なんでしたっけ? セックスの話でしたっけ?」


「何でそうなる!? コーヒーの話だ馬鹿者!」


 ついグラマリール学院長のように相手を罵倒しながら彼女は必殺の護符を懐から取り出していた。


「ぶぶぶ物騒な物は診察室ではご遠慮願います! てかごめんなさい!」


「い、いや、こちらも我を失ってしまっていた。どうやら上司の悪い癖が身についてしまったらしい」


 カエルみたいになって平謝りに謝る本多を見下ろしながら、正気を取り戻した彼女は凶器をしまった。


「さて、話を元に戻しますと、コーヒーにカフェインが含まれているってことは二百年ほど前に既に判明していました。そして、ご想像通り、コーヒーが飲みたくてもカフェインの作用のせいで中々出来ないって人が昔からかなりの割合で存在しました。しかし人間の良い点でもあり悪い点でもあるのは、欲望に忠実かつあきらめの悪いってところでして、彼らは頭を搾って誘惑の香り漂う禁断の飲み物を口にする手段を考えました。その結果生まれた概念が、『デカフェ』です」


「でかふぇ?」


「簡単に言うと飲食物からカフェインを取り除くことです」


「そ、そんなことが出来るのか!?」


 彼女は予言の文中に自身の名を見出した時よりも驚愕した。

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