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カルテ640 怪球カマグ(前編) その28

「ちょっと聞いてくださいよー、お嬢さん。僕はどちらかというとあまりコーヒーには強くない方でして、いわゆるコーヒー酔いしちゃうんですよね。てなわけで僕は紅茶派だったんですけど最近コンビニの棚がどんどんコーヒー軍団に占領されていって、僕の愛するロ〇ヤルミルクティーは駆逐されていき、非常に肩身が狭い思いをしております。今じゃあるのはせいぜいタピオカ入りくらいなもんですよ。


 ちなみに僕のような日本人って種族は他の国よりもコーヒーに強いタイプの人が多いって噂がありまして、それでここまで広まったんだと思いますねー。他にも困ったことと言えば」


「ストップ! もうわかったからいい加減話を元に戻せ! 帰れなくなるだろうが!」


 脱線事故が目に見えてひどくなってきたので耐えられなくなった彼女は暴走医者を制止した。


「おおっと、こりゃまた失礼しました! 溜まりに溜まった日頃のうっ憤がついつい噴火しちゃいまして……いやあ、医者やってると、不眠患者さんはしょっちゅう見かけるんですが、そういう人に限ってコーヒーを毎日欠かさず、しかもブラックなんかで飲んでるんですよー。おかげでもう最近診察する前から、『まーたカフェ中さんかしら』って予想がついちゃうくらいなんですわ。


『毎日睡眠不足だし朝シャキっとするためだ』とか、『朝1杯だけだからいいに決まってる』とか、『昔からずっとやってる習慣だ』とかなんとか皆さん口をそろえて仰いますけど、んなもん歳取ってくれば若いころと違ってカフェインの代謝能は落ちるし、そのくせ眠れないので睡眠薬処方しろって言うんだからふざけんなって話ですね。因みに40代と60代でガクッと代謝能が低下する場合が多いそうですよ。


 ま、そりゃあ医療費も膨らむってもんですわ。だからまずはそいつをおやめなさいって口を酸っぱくして説得するんですけど、やめられない人ってのは梃子でもやめません。


 いやあ、自分は好きじゃないもんだからつい文句言っちゃいますが、コーヒー党のあなたにとってはきつく聞こえるかもしれないのですみませんが……」


「……」


 言葉の怒涛の洪水の前に彼女は圧倒され、もはや抵抗をあきらめブラックコーヒーのように苦い顔をするのみだった。

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