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カルテ636 怪球カマグ(前編) その24

「しかし夜も更けてきて少し肌寒くなってきたことですし、温かいお茶でも一杯ほしいところですね。おーい、セレちゃー……」


「持ってくるわけないでしょう、先生」


 肌寒さどころか肌が皮下組織まで凍りくほどの冷気を伴った声が背後から響き、本多はぞくりとして肩をすくませた。


「じょ、冗談ですよ~。欲しけりゃ自分で入れますって」


「わかっていればよろしいのです」


 さげすむような視線をふんだんに浴びせかけながら、看護師は音も無く姿を消した。どういう雇用関係なんだろうかと患者の方は他人事ながらいささか気になった。


「ところでお茶と言えば、色々な種類がありますけど、あなたは最近何か飲んだりしてませんか?」


「さあ、別に茶などは愛飲してはいないが……」


 彼女はまるで世間話のような医者の態度に内心イラつきながらも、冷静さを装って答えた。


「へー、そうですか。じゃあ質問を変えましょうか。お茶じゃなくって、何か別の飲み物ではどうですかね? 例えば黒っぽくて苦くて……」


「!」


 その時彼女は衝動的に再び椅子から腰を上げてその場に直立していた。もっとも今回は怒りのせいではなく、驚愕のためだったが。


「なななななな何故それを知っている!? 誰にも話したことが無いのに! あなたは千里眼の持ち主の神か何かか!?」


「いえいえ、とんでもねえ、あたしゃ神様だよ」


「やっぱそうなの!?」


「……ってこんなギャグ、今ではこっちの世界でだって通じませんね。失礼しました。別に僕はどこにでもいる普通の人間に過ぎませんが、人よりも勘が鋭いだけでしてね、あなたの着ているお召し物から、少-しばかり嗅ぎなれた匂いが漂ってくるので、ピーンときたわけなんですよ」


「そ、そうか……!」


 彼女は自分の護符士用の黒いローブを見下ろす。確かに言われてみれば、非常に見えにくいが服の一部にはかすかな染みがついており、そこからかすかな芳香が感じ取ることが出来た。もっとも装着している彼女自身の鼻は慣れてしまって気づくのに集中力が必要だったが。

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