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カルテ631 怪球カマグ(前編) その19

「やっぱり眠れない……」


 今晩も相変わらずなかなか寝つけず苛々していた例の部下は、ふと思い立ってベッドから降りると、寝間着を脱ぎ捨てもはや昼でも夜でも愛用している教員用の黒ローブに着替え始めた。この前少し汚してしまい、水で拭き取ったのだがそろそろ洗濯する必要はあるだろう。


(またちょっと散歩するとするか……)


 最近頓に不眠が悪化し、ベッドの中で天井を眺めているだけの時間が多く、夜歩きでもしないとやっていられなかったのだ。そのままスタスタと夜間通用口まで進み、屋外へと抜け出した。途端に冷たい秋風が彼女の頬を撫で、温度差にくしゃみをしそうになった。


(もっと厚着してくるべきだったか……? しかし、そういえばあの音がしないような……)


 今宵はあのガンガンやかましい槌音は聞こえず、虫の声ばかりが涼やかに鳴り響くだけだ。してみると、どうやら魔封剣作りは一段落したのだろうか。


 あの晩他にも様々な研究について学院長や黒装束たちが話してくれたが、その貴重さと威力においては、やはり一番最初にお披露目された魔封剣に勝るものは無さそうであった。あれがめでたく完成したとなると、是非とも拝見させてほしいと彼女は心底思った。まったく、恐ろしいレアアイテムであるが、ああいう武器を造り出すという発想もまた非凡である。正直言って研究内容が彼女にとっては難解すぎるものもあったが、彼の頭の中も是非とも拝見させてほしいものだった。


(でも、何にせよ今日は無理そうだな……気分が優れない……)


 彼女は白い手で額を押さえる。このところ、不眠に加えてめまいを感じることが増えていた。更には、ふいに胸の鼓動が激しくなり、動悸を覚えるようにもなった。おかげで人前で平気そうにふるまうのにかなりのエネルギーを要し、日々の仕事をするのも一苦労だった。


(これは一体どうしたことだ!? 私ともあろうものが体調不良だなどと……)


 彼女は思い悩み、生活習慣を改善しようとしたり、薬草師の元を訪れたりするも、症状は一向に良くならず、悪化するのみだった。追い打ちをかけるように吐気まで生じた時は、思わず泣きたくなった。

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