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カルテ626 怪球カマグ(前編) その14

「今制作中の剣の材料は、そこな金属化したハイ・イーブルエルフどもの皮膚だった部分だ。もっともそぎ落とし過ぎて多少肉や脂肪が混ざっているやもしれぬがな。まったく木材をカンナがけするのとはわけが違うから削るのに相当苦労したわ」


 作業に邁進する学院長は人道にもとる鬼畜の所業をこともなげに打ち明ける。


「な、何故そのようなことを……」


「貴様の首から上についているものは飾り物か? もうここまでネタが割れたのなら、くどくど説明せずとも概ね理解しているのであろう? 自分は神話の武具を再現したいのだ」


「神話……!?」


「かつて世界を造り上げた5柱の神々は、人知の及ばぬ不思議な力を秘めた道具や武器を所有していたという。それらは強大な魔法を行使することが出来たと伝えられている。慈愛神ライドラースの持つ、全てを見通すことが出来る水晶球などが有名だな。そのような秘宝がもし本当に存在するとすれば、ハイ・イーブルエルフ狩りや他国との戦争などに絶大な影響力を与える事間違いなしだ」


「そんなことが可能なんですか!?」


 知らず知らず、彼女の口調に熱がこもり、声が大きくなっていた。


「さすがに神代のアイテムを完全に再現することは不可能かもしれん。しかしそこまでとはいかなくても、今までのように一度使えば紙切れと化す護符よりはマシなものを量産したい、という思いは常々抱いておったのだ。なにせ不便極まりないからな。もっとも自分には今更必要のないものではあるがな」


「さすがいくらでも使用できる謎の護符を持つ方の言葉は重みが違いますね」


 場の雰囲気に慣れたのか、彼女の天然の突っ込み力がパワーアップしてきた。周囲の黒づくめたちがすわ学院長の雷が落ちないかと緊張し、皆凍りつく。


「相変わらず無礼なやつだな……だが、その通りなので許してやろう」


 たまたま虫の居所が良かったのか、運良く何事も起きなかったので黒装束たちは安どのため息を吐き、また作業に立ち戻った。


(なるほど、そういうことか……でも……)


 彼女の心の中のモヤモヤは、収まるどころか叢雲のように更に広がる一方だった。

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