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カルテ617 怪球カマグ(前編) その5

 抜けば水が滴るような切れ味抜群の剣のごとく白銀にきらめく球体の直径は3メートルはあろうか、その表面は原石から削り出されて名工によって磨き抜かれたオーブのように滑らかだが、至るところから飛び出しウネウネとうごめく数多の触手のため、新種の海洋生物のようにも見えた。今や茂みを飛び出してその上空に漂うその姿は、真昼の日光を受けてまばゆいばかりに燦然と輝き、あたかも地上に忽然と現出した第二の太陽だった。


「球体カマグ……? 確かに占い師の使う水晶玉みたいに丸っこいですが……あんな変わった形の魔獣がいるんですか?」


「詳しいことは不明だが、何でも今をさかのぼること遥か昔、インヴェガ帝国と我がエビリファイ連合との間に何度目かの戦いがあった時、こちらの兵士のうちの何人かが捕虜となり、帝国の深部にあると伝えられる魔獣創造施設にて壮絶な人体改造術を施され、そのうちの一人があの魔獣となった。その力は想像以上にすさまじく、あらゆる動物を銀に変えたという」


 森羅万象全ての物事に精通していると謳われるザイザル共和国の最高権力者たる人物は、まるで昔話でもそらんじるかのように淡々と語った。


「そ、そんなメデューサ以上にヤバいやつなんですか!?」


「別にメデューサの石化能力と違って視線は関係なさそうだがな。というわけで最強の部類に属する魔獣であったがどうやらその分制御不能だったらしく、厳重に管理されていたにも関わらず、ある時職員の過半数を彫像に変えて施設を脱走し、姿をくらました。かようないわくつきの魔獣ではあるが、今まで目撃されたり退治されたりしたという噂を耳にしなかったことから察するに、おそらく各地を転々としていたか、どこかに隠れ潜んでいたのだろう。外見に似ず中々狡猾なやつだ。もし命令を聞くのであれば是非とも我が手下に欲しいところではあるがな」


「……」


 普段あまり他人を褒めることの少ない学院長が手放しで称賛するのを目の当たりにし、部下は底知れぬ恐怖を覚えた。

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