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カルテ616 怪球カマグ(前編) その4

「ええええええええええええ!?」


 部下が心臓を口から射出しそうになるほど叫ぶのも無理はない。なんと先ほどまで美味しそうな外見をしていたカミナリ鳥たちはハイ・イーブルエルフ同様に全羽ともに銀色の彫像と化していた。もはやおぞましい何者かが植物の帳の向こうに鎮座しているのは明々白々だった。


「やややややややばいですよ学院長殿!」


「まあ、この程度は想定内よ。うろたえるでない。しかし、何羽ものカミナリ鳥が一度に銀化しているところを見ると、複数での攻撃はあまり意味がないのかもしれんな……」


 すっかり取り乱して逃げ腰の部下を尻目に、学院長は超然とした態度を崩さず研究者のように考察を述べる。


「どうやら銀化能力は光線などの類いではなく、敵との接触により起こるようだな。実に興味深い。ふむ……」


「がががががががががが学院長殿ぉ!」


 思索にふけるグラマリールに対し、部下が茂みを指さしながら、何度目かの大絶叫をぶちまける。なんと、木々の隙間から銀色の細長いものがいくつも出現し、ニョロニョロと宙に向かって伸びていったのだ。


「ほう、ようやくお出ましか」


 学院長が嬉しそうに目を細める。蛇のようにうねる謎の銀色のものは木々を押し開き、その奥から触手に連なる銀色の巨大な球体がゆっくりと姿を現した。


「……」


 これにはやかましい部下もさすがに言葉を失い、ただただ呆然と眺めているばかりだった。


「な……何ですか、こいつは?」


 ようやく声を発した時も、今までのような活気はなく感情は抜けきっており、如何に驚愕し衝撃を受けたのかを逆に物語っていた。


「うむ……これは……」


 歩く図書館とも形容される知識の塊のような学院長も、異次元の存在を前に慎重になって言葉を探していた。だが突如ひらめいたのか、瞳に光が宿り、おもむろに口を開いた。


「確か、インヴェガ帝国に潜入している密偵からの報告に、このような姿形の魔獣について記してあった……なんでも、名を、球体カマグというと……」

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