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カルテ593 牡牛の刑(後編) その44

「「「性懲りもなくまたあの岩か……たかが薄汚い畜生の死体が一体なんだというのだ!?」」」


 全ての謎が解けたと言わんばかりの得意気な名探偵に訳も分からずホールに集められて腹を立てるモブキャラのごとく、ホーネルは憤怒をあらわにした。


「いい質問だな。順を追って説明するからちょい待ってくれ。で、俺は思い出したんだが、白亜の建物でホンダ先生はこう仰ってたんだ。あっちの世界では、親を失くした仔ヤギに同情して母乳を出した雄ヤギが目撃されたことが何回かあるそうだ」


「「「ほへ?」」」


 ホーネルはあのハゲ医者のうんちくを聞いたケルガーと同様の反応を示してくれた。


「その後彼はこう先を続けた。『「だから僕の作戦としては、その流刑地にいたいけな仔牛をドナドナと連れて行って一緒に飼えば、雄牛の母性本能だか父性本能だかが刺激されて母乳だか父乳だかもドバドバ出るかもしれないって寸法ですよ旦那! アイムジーニアス!」

』ってね」


「「「んなもん常識的に考えて許可が下りるわけがないだろうが!」」」


「一から十まで全く俺と同じ答え方をしてくれて嬉しくなっちゃうぜ、ホーネルさん。意外と気が合うな」


「「「黙れクソ牛!調子に乗るんじゃねえ!」」」


「まあ落ち着けってパイセン。さて、遠路はるばる実際にこの流刑地に辿り着いて、俺は考えを改めた。もしやこの不思議な崖には困った時の食料貯蔵庫の他にも別の使い道があるんじゃないかってな」


 そう口にしながら、かれはあの異世界の建物と同じ二つ名を冠する白い絶壁を見上げた。


「「「ま、まさか……!」」」


 憎しみと怒りで頭の回転がいささか鈍っていたホーネルも、事ここに至ってようやく思い至る。あの岩のひび割れから覗いていた茶色い毛の動物というのは、ひょっとして……


「そうだよ、ホーネルさん。あれは遥か昔この地がまだ底なし沼だった時、親と離れ離れになって運悪く溺れて死んだ、仔牛の変わり果てた姿なんだよ! 謎は全て解けたっ!」


「「「……!」」」


 ホーネルは全身を突風が突き抜けたかのような衝撃を味わった。

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