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カルテ580 牡牛の刑(後編) その31

「そらそらそらそらそららららららあーっ! 吹っ飛べえええええーっ!」


 ケルガーの息もつかせぬ威勢の良い扇ぎっぷりによって立ち込めていた毒霧は見る見るうちに形を失い、文字通り雲散霧消していく。魔獣ミノタウロスの剛腕があればこそなせる技であった。


「グルルルルルル……」


 対するケルベロスはといえば、崖の上で全身の毛を逆立ててワナワナと震えている。どうやらせっかくの切り札だった新必殺技がいとも簡単に破られたため、ショックと憤怒がないまぜになっている様子だった。


「おおおおおおのれこわっぱめ! いい気になるなよ! 勝負はまだまだこれからだボケェ!」


「ハッハッハッ、その通りだ。ゴキブリ並みにしぶとい貴様は、やはり俺自身がこの鋼の肉体で直々に叩きのめしてやらねばならんようだな。今こそ時は来たれり!」


「その前に漏れるううううう!」


「おい三本目! 大事なシーンで何を言ってやがる!?」


「フッ、まあ生理現象は致し方あるまい。この地は寒すぎてどうもアレが近くなりがちだからな。よかろう、許可を与える! 存分にお花摘みをするがよい!」


「サンキュウウウウウウウウ!」


「……おいおい、来る前におうちで済ませておけよ童貞ズ」


 ケルベロスはまるで散歩中の犬のように片足を上げて紫色の小便を手短に済ませたので、勢いを削がれたケルガーも思わず真顔で突っ込んだ。


「「「待たせたなクソ牛! 行くぞおおおおおおおおっ! 地獄に落ちろ!」」」


 ようやく事を終えた魔犬は地を蹴って跳躍すると、憎き仇敵目がけてまっしぐらに急峻な崖を駆け下っていく。その獰猛かつ苛烈な姿はまさに地獄の番犬の異名にふさわしく、ケルガーの後ろの雄牛など恐怖のあまり卒倒しそうなほどだった。


「ヘッ、来るなら来いよ三つ子の青瓢箪め。こちとらいくらでもガチンコで相手してやるぜ! どりゃああああああああっ!」


 ケルガーは頭上に掲げ持っていた例の大岩を腕の筋力で大きく振り回すと、まるで円盤のように勢いよくケルベロス目がけて投擲した。

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