カルテ537 エターナル・エンペラー(後編) その104
「うっそでしょー!? なんであんな変態爺様を誘拐すんのよー!? どこら辺に需要があるわけー!?」
「何か特殊な性癖のやからなのか? 例えば老人愛とか……」
「やめてくださいよ! あ、でも、確か……!」
何かにひらめいたシグマートが、蚊帳の外だったテレミンの方を振り返った。
「テレミンくん! 君たちの聞いたというお告げをもう一回教えてくれないか!気にかかる部分があるんだ!」
「ああ、そういえば……」
言われてテレミンも、ようやく思い至った……お告げの真の意味に。彼はスラスラと暗記した台詞を喋る舞台上の役者よろしく、姿勢を正して神聖なる神の言葉を通暁した。
「確か、『赤き夜、青き地の底に新たな出会いあり。細き蜘蛛の糸の先に骨に守られし黄金の蝶羽ばたけり。その謎を解きし時、捕らわれし不死の翁へ至る道、開かれん』だったはずです。ね、ルセフィ?」
「ええ、間違いないわ。てっきり全ての意味が解読されたと思っていたけど……」
「僕もさっきまでそう確信していたよ。『不死の翁』っていうのはエターナル・エンペラーことメイロン博士のことだってね。でも、あの人は確かに死なないアンデッドだったけれど、別に捕らえられてはいなかった。この予言の文では彼を意味する言葉は『骨』のみだ。ってことは……」
「やはりそうか! つまり『不死の翁』はフシジンレオさんのことで、彼が誘拐されるというのがラストの内容だったんだ!」
テレミンの謎解き中に興奮状態のシグマートが割り込み、結論を導き出す。以前、マンティコア自身が自分の名前の由来を「死なない獅子」だと言っていたのを記憶の底から呼び起こしたのだ。
「チックショー! あらかじめそうとわかっていれば、何らかの手が打てたっていうのに……ウギギギギーっ!」
「痛いからオレの尻をつねらないでください、イレッサさん! そんなのどうしようもないでしょう!」
ウルソという伝令が覆面の下で眉をしかめる。
「ま、言われてみたらその通りね。後悔しても無駄ってことか。で、一体どこのどいつに拉致られちゃったの!? 包み隠さず話しなさい!」
「は、はい! 目撃者から得た証言によると、犯人はどうやら黒ローブの護符師だったようです! ひょっとすると符学院の手の者かも……」
「「「えーっ!?」」」
イレッサとミラドールとシグマートの叫び声がまたもやハモる。その合唱を聞きながら、相変わらず蚊帳の外のテレミンは、結局骸骨に本にサインしてもらってないことを今になって思い出し、深く後悔していた。
という訳で何とか年内にエターナル・エンペラー終わりました!十万字以上かかって申し訳ありません!では!




