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カルテ524 エターナル・エンペラー(後編) その93

「……」


 テレミンは、今度ばかりは無理だの何だの泣き言は言わずに真剣に考える。いよいよ最終問題だ。これさえ乗り越えることが出来れば、この極寒の地の底ともおさらばだ。だが、さすがはメイロン博士という史上稀に見る大賢者にさえ答えられなかった難問で、一筋縄にはいかない。せめてもう少し何か手がかりがあれば……。


「あ、あたいたちのことならそんなに気にしなくっていいからね、虫好きボーイ。いざとなったらこんな穴自力で脱出してみせるわよ!」


「そ、そうだぞ少年。心を楽にして落ち着いてやれば自ずと解けると思うぞ……何となくだが。なあ、シグマート?」


「でも正直言って側で聞いていた僕にもさっぱりわかりませんよ。さっきからあれこれ思案しているんですが……」


「確かにクモをも掴むような話よね……って蜘蛛ならさっき掴んでいたっけ」


「ルセフィさん、冗談言ってる場合じゃないですよ!それにあれは掴んだんじゃなくてすくい取った感じでしたよ!」


「まあまあフィズリンさん。しかしこのまま夜が明ければ吸血鬼のルセフィさんにとっても困りますしね。小生も力になりたいのですが、なんともはや……」


 頼りになるんだかならないんだかよくわからないギャラリーの声援が耳に痛い。彼ら全員の命運を背負っているのが自分だと思うと、胃がキリキリしてきそうだったが、イレッサの言う通り、今は思惑の外に置くこととした。


(考えろ……深く深く考えろ……)


 自分の持てる限りの知識と共感力を注入するも、真実は一向に浮かんでこない。前問までの名調子が嘘のようだ。息が白いほど寒いのに額に汗をかき、暑ささえ覚えていた。


「おっ、もうお手上げか? 仕方がないのう、では特別に、もう少しだけ続きを語ってやることとしよう。心して聞くがよいぞ」


 テレミンの苦悩を察知した骸骨は助け舟を出しながら、首元から紐でぶら下がっていた古い革袋をそっと握りしめた。その黒いローブの周囲を、黄金の蝶がまるで守護者のように円を描いて舞っていた。

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