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カルテ512 エターナル・エンペラー(後編) その79

「な、なんで勝手にのぞいたりしたんだよ!?」


 宇宙の深淵を映し出す夜空を背景に、怒りに震えるラミアンは仁王立ちになった。


「何故ってあなたが私の話を真剣に聞いてくれないからよ!」


 今まで割と冷静だったイルトラの声音に瞬時にラミアンを上回る熱がこもり、夜の静けさを切り裂いたので、テレミンは気圧されてたじろいだ。


「いつもいつもいつも話をうやむやにして逃げ回っているし、一体何を考えているんだって知りたくなっても当然じゃないのよ! だからあなたの秘密が気になって調べてしまったのよ!」


「秘密だなんて……隠し事なんてさらさらないよ」


 彼は何とか虚勢をはったが、忿怒の形相の恋する乙女の前では全て無駄な努力だった。


「嘘よ! あなたは私の他に想い人がいることなんて、こっちは先刻承知しているわよ! あなたは私の胸が視線に入りそうになるといつも意図的に目を逸らしていた。最初の頃は恥ずかしがっているのかなって思ったけど、街でも胸の大きい女性を極力見ないようにしているところを目撃して理解したわ。あなたは胸が小さい女性の方が好きなのよ!」


「ど、どうしてそれを!?」


 口走った途端、ラミアンはまたもや己の軽率さを呪った。どうも馬鹿正直でいけない。多分尋問を受けて拷問されたとしたら、即座に全てを吐くだろう。しかし、「目は口ほどに物を言う」とはよく言ったものだ。


「わからいでか、この腐れロリコン!」


「ロロロロリコンじゃないわ! ただ、おっぱいの大きい女性が苦手なだけだよ!」


「まあ、どっちでもいいわ。でも、あなたがそうなった原因があの署名を見たおかげではっきりした。あなたが暮らしていたという隠れ里は、ズバリエルフの村ね。そこで大方胸のペチャンコなエルフの美女に優しくされて、鼻の下を伸ばしていたんでしょう。気持ち悪いったらありゃしない!」


 瞬時、図星を指されて周章狼狽となりかけたラミアンだったが、何とか気力で持ちこたえた。


「そ、そんな……誤解だよ! だいぶ違うよ!」


「うるさい黙れこの変態!」


 額に青筋を浮かべ、怒髪天を突くイルトラはいまや嫉妬に燃える鬼女と化し、ラミアンを非難した。

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