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カルテ509 エターナル・エンペラー(後編) その76

「案内人さん、すみませんが右手に持ったそれをちょっと貸して頂けませんか?」


「ナニ、コレカ!?」


 背後から突然声をかけられ冷酷な青ローブもいささか動揺した様子だったが、意外と素直に手にしていたある物をテレミンに手渡した。それは、先ほど隠し扉を開ける際に引っこ抜かれた平べったい画板であった。


「ほう、それはそれがしが動植物のスケッチなどをする時に普段利用している画板じゃが、そんな物を一体虫捕りにどう使うつもりじゃ?」


 ギャラリーの一員と化している主催者の骸骨も興味津々なご様子で、首を突っ込んでくる。


「もちろんこう使うんです! それ!」


 気合一閃、掛け声と共にテレミンは羊皮紙と同じくらいの薄さの板を、床とビドロケースの間に流れるように滑り込ませた。ケース内の囚人たる蜘蛛は、ノソノソと板の方に這い上がってくる。そのままケースの口を板で塞ぐと、少年はそのままそれら全てを天地無用とばかりにひっくり返した。


「はい、これで任務完了です!」


「そ、そんな技が……どこで教わったのよ、テレミン!?」


「まったく惚れ惚れするほど臨機応変ですねぇ」


「おお、素晴らしい! 見事1分で我が愛しのマーデュオックスちゃんを捕らえおった! さすが大言壮語するだけのことはあるのう。有言実行じゃ!」


 まるで手品師のようなテレミンの華麗な手技に骸骨も大喜びで彼の仲間たちに混ざってスタンディングオベーションし、カンカンと白骨化した両の手のひらを打ち合わせた。


「時にお主、先ほどランプの灯を蜘蛛に近づけたが、あれは姿をよく見るためではあるまい、どうじゃ?」


 骨の王はビドロケースを慎重に手渡そうとするテレミンに対し、子供にどんないたずらをしたのかをこっそり尋ねる母親のようにそっとささやいた。


「ハハッ、バレてましたか」


「当り前じゃ、小生を誰じゃと思っとるんじゃ? エターナル・エンペラーじゃぞ」


「そうでしたね。あの蜘蛛は、寒冷地に適応した寒さに強い種だとあなたから聞いた時、逆に暑さに弱いんじゃないかと閃いたんですよ。実際そういうタイプの生物は多いですからね」


「それでランプの熱で少し弱らせ、動きを鈍くさせてから捕まえたってわけね! そうでしょう?」


 テレミンの台詞の後をルセフィが受け継ぎ、彼はニヤリと首肯した。

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