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カルテ506 エターナル・エンペラー(後編) その73

「そんなふくれっ面しないでよ、ルセフィ。確かに君の帽子は柔らかそうで虫を捕まえるのに一見最適に見えるけど、問題は中の様子がさっぱりわからないことなんだ。運が悪いと、知らないうちに貴重な蜘蛛をうっかり潰しかねないよ」


 テレミンは左手に持ったランプを蜘蛛にジリジリと近づけながら、彼女をなだめた。


「なるほど……かなり深いところまで考えた末なのね。でも、それじゃぁ……」


「だから使うんだよ。中が丸見えのアレを!」


「ええっ、そんなものがあるわけが……ほわっ!」


 そこまで言って察しの良い彼女はようやくとあることに気づいたためか、変な声を漏らした。


「そう、正解はこれだよ、ルセフィ!」


 テレミンは側に転がっていた空のビドロケースを右手で引っ掴むと、電光石火の早業で、逃げ場を失い袋小路に追い込まれた脱走者の上にポンッと被せた。ケースは直ちに蜘蛛を封じる透明な檻と化し、一同はやんややんやの大喝采となった。


「すごいわテレミン! やっぱりあなたって天才ね!……蜘蛛を捕まえただけだけど」


「やりますね。さすが動物博士少年ですな……蜘蛛を捕まえただけですけど」


「テレミンさんならやると思ってました!……蜘蛛を捕まえただけだけど」


「皆一言多いよ! 確かに蜘蛛を捕まえただけだけど!」


「あーん、あたいも捕まえてーん! ♪うーちのババアのおっぱいはー」


「どさくさに紛れてわけわからん歌を歌うなイカレ大根め!」


「ていうか何度注意されたら黙るんですかね、イレッサさんは……」


「ごめんちゃいねー。んで、これでもうミッションクリアーってわけなのーん? 意外と呆気ないけどー」


「謝りつつ喋るなボケエエエエエエエー!」


「まあまあ皆さん落ち着いて。まだまだこれからですよっと。ここまでは全体の半分に過ぎません。このままケースを動かしたら確実にまた逃げられてしまいますからね」


 テレミンは照れ隠しに頭をかきながらも、その後ろでイレッサに対して猛り狂うミラドールとは対照的に冷静さを失ってはいなかった。


「た、確かにそうですね。でも、この後はどうすればいいんですか? 床石を剥がすか素早くひっくり返すぐらいしか……」


「なあに、そんな強引なことをせずとも済む良い物をさっき発見しましたよ、フィズリンさん」


 テレミンは心配そうなメイドにいたずらっぽく微笑んだ。

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