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カルテ505 エターナル・エンペラー(後編) その72

「そうね、これで道を教えて貰えて無事帰られるのなら安い買い物だし、私は賛成よ。それに揉めている間にも時間は過ぎていくし、日が昇ると少々まずいことになるのよ、私」


「あの、私もテレミンさんになら命を預けられます。今まで随分助けてもらいましたから」


「自分も賛成です。話してみると凄い知識人でしたからね、彼。後、これ以上無駄に長引いて寒い所にいるのも嫌ですから」


「私も右に同じだ。あきらめて腹をくくれ、腐れワカメ」


 いつの間にかルセフィとフィズリンとシグマート、そしてミラドールもテレミン指示側に回っていたので、結局イレッサも、「んもー、わかったわよ。しゃーないわねー」としぶしぶ顔で承知し、一同の運命は一蓮托生、少年の手に託された。


「でも実際のところどーやって無傷で捕まえるのよ? 悪いけどここには虫取り網なんて見当たらないわよー?」


 負け惜しみのつもりか、モヒカン頭が早速嫌な質問をしてくる。


「いえ、あんなの、代わりになる物があれば別に必要ありませんよ。僕にはもう目星がついてますし」


 少年は特に気負った風もなく、流れる水のような自然体で構え、何故かランプに火をつけると、じっと前方を見つめていた。


「そう……ならいいけど」


 その姿に、まるで武道の達人が格下の相手と余裕を持って戦うのを見物するような安心感を覚え、さすがの邪妖精も大人しく引き下がった。


(一つここはテレミンちゃんのお手並み拝見といこうかしら。でも、どうやって?)


 イレッサが背後から目を細めて見守っていると、少年が突如一点を指差し、「あっ、いた!」と声高に叫んだ。確かに部屋の隅の一角に、黒く小さな影が縮こまっている姿がうかがえた。あそこならば逃げ場が少ないため、狩る側としては実に好都合だ。


「テレミン、よかったら私の青い帽子を貸しましょうか? この建物内の物だし、ルール違反には当たらないはずよ」


「いや、ありがたいけれどそれには及ばないよ、ルセフィ」


「あら、なんでよ!」


 少年はせっかく差し伸べられた手を断ったので、少女はちょっとぷんぷくりんになった。

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