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カルテ497 エターナル・エンペラー(後編) その65

「しかしいくら好きでも、何故また蜘蛛なんて奴をご自身の大切な紋章にしたんですか?醜くて嫌われ者だし好きな人なんていないでしょうに」


「何じゃと!? 今何と言った!?」


「い、いえ、その……」


 至極当たり前のテレミンの質問だったが、どうやら骸骨の逆鱗に触れてしまったようで、しばし気まずい沈黙が流れた。


「何もわかっとらんなこわっぱが! ああ見えても蜘蛛はハエやゴキブリや蚊といった害虫をせっせと捕ってくれる益虫だということも知らんのか! 例えばアシダカグモが住む家は数年でゴキブリが全滅するというほど凄いんじゃぞ! 更にクモは様々な種類がおり、糸を伸ばして空を飛ぶものや、水中に一生住むもの、果ては投げ縄で獲物を捕まえるものなど、その能力も多種多様なんじゃよ。この奥深さにひれ伏すがよいわ痴れ者め!」


「ま、誠にすみませんでした! まさか蜘蛛がそんなに奥深い生き物だとはつゆ知らず、自分の不明を恥じるばかりです!」


(あちゃ〜、やってしまった〜! これじゃイレッサさんのことを笑えないな……)


 天国から地獄に急降下したテレミンは即座に気分を切り替えてひれ伏し、頭を冷たく平らな床に擦り付けてひたすら不死の王の怒りの嵐が通り過ぎるのを待った。


「じゃがまあ、見たところお主はまだまだ若造であるし、それがしもそのような年頃の時はもっと未熟で物知らずで、愚かな間違いを繰り返したものじゃ。よってお主に名誉挽回の機会を与えようぞ」


 骸骨は年長者の貫禄を持って憤怒の鉾を収めると、白い白墨のごとき右手の人差し指を、今まで観察していたビドロケースに突きつけた。そこには哀れなオス蜘蛛をバリバリと食べるのに夢中なメス蜘蛛のみが鎮座していた。どうやら夫はめでたく愛妻の栄養となったらしい。


「お主にいくつかのテストをする。全てに合格すれば先ほどの暴言を許し、洞窟の外へ出してやろう。良いか?」


「はい! やらせていただきます! でも、失敗した時はどうなるんでしょうか…?」


「その時はお主ら全員ゾンビの仲間入り決定じゃ。だいぶ数も減っておったしの」


「「「「「「えええええええ!?」」」」」」


 今まで黙って事の成り行きを見守っていた一同が一斉に叫ぶ。いきなりここで生命を賭けろと強制されても素直に従える者など当然ながら誰もいなかった。

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