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カルテ495 エターナル・エンペラー(後編) その63

 話に聞いた通り、応接間ではまず館の主人こと、グーフィス・ファボワールの面接を受けた。


「すみませんね、ラミアンさん。最近は薬草師を騙る不届き者がいまして、こちらも人様の痛くもない腹を探るような真似は誠に心苦しいのですが、致し方ないんですよ。何しろ妻が数年前に他界してから男手ひとつで大事に育てた一人娘を診ていただくわけですから」


 人の良さそうな恰幅の良い五十代と思しき男性は、薄くなった頭をかきながらこう弁明した。


「いえいえ、最もなことですよ、ご主人。誰だって生き馬の目を抜くようなこのご時世、そうせざるを得ないと思います。世の中怪しい輩が本当に多いですから」


 どの口がそう言うのかと内心自己突っ込みを入れながらも、そんなことはおくびにも出さず、いけしゃあしゃあとラミアンは答えた。


「そうですか。ご理解いただけて嬉しいです。最近では悪名高い邪神デルモベートの信者を名乗る者まで巷で見かけるものですから、用心深くなっているんです。まったく、隣のインヴェガ帝国だったらあんな奴ら極刑ものですよ。では、手始めに2、3薬草についての知識を披露していただきたく思います。ま、念のためのようなものですよ。よろしいですか?」


「ええ、構いませんとも」


 まるで熟練の薬草師めいた鷹揚な態度でラミアンはぬけぬけと即答した。ここまでの一連の流れは酒場の情報で予習済みだ。彼は余裕に満ち溢れた言葉使いで、ラベルフィーユから教わった、柳の木の皮を煎じたものとハリブキの茎の皮を削ったものから作った秘伝の薬について、簡単な講義を行った。あの少年の日、骨折の痛みを和らげるため彼女に飲ませてもらった異常に苦い香草茶だ。


(まったく、ラベルフィーユには、いくら感謝してもし足りないくらいだな。早くアクテ村に帰りたい……)


 緑と光に満ちた美しいエルフの里と愛しき麗人を心に浮かべながら、初講義はつつがなく終了した。


「いやはや素晴らしい! 怪しんだりして誠に申し訳ない! まさしくあなたは紛れもない一流の薬草師です!」


 主人は感動のあまり、ソファーから立ち上がって拍手喝采するほどであり、ラミアンは顔がにやけそうになるのを抑えるのに一苦労だった。

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