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カルテ491 エターナル・エンペラー(後編) その59

「俺も知らん。友人も当然わからないから適当な見立てを述べて、そこら辺の道端で摘んできた名前も不明な雑草を薬効あらたかな薬草だと偽って、お湯に浸してその汁を飲むよう指導したそうだ」


「ひっでえ奴だな。犬の小便とかかかってそう……」


「飲酒中に嫌なこと言うなバカ。で、ちゃっかりファボワール邸に客人として滞在を許されたところまでは良かったんだが何日経とうが効果がなく、そのうち雑草を採取しているところを発見されちまって、とうとう追い出されて出禁となり、結局一文ももらえなかったそうだ」


 そこまで話すと語り手の男は手にしたジョッキをグビッと傾け、中のエールを美味そうに味わった。


「そうか……まあ、いつまでも騙し通せるわけないわなあ。やっぱりうまい儲け話なんてないもんだな。真面目にコツコツ働くしかないか……泥棒でも」


「いや泥棒真面目にやるなよ! さてと、なんか頼むか?」


「ちょっと待ってください! 今の話、もう少し詳しく聞かせてください!」


 気がつくとラミアンは、コップ片手に見知らぬ怪しげな男二人の間に強引に割り込んでいた。


「うわっ、何だよ兄ちゃん急に! こっち来んなよ! 近いよ!」


「ガキが大人の会話に横から割り込むんじゃねえよ! ガキは大人しくママのおっぱいでも飲んでろ! って俺だって飲みてえわおっぱい! おーいおばちゃん、おっぱいミルク一つくれ!」


「お前本当におっぱい好きだなおい! てか飲み過ぎだよ!」


「おっぱいなんて飲んでねえよ!」


「酒だよ! てかガキは本当にどっか行け!」


 二人の酔っ払いが文字通り口から泡を飛ばして抗議する中、ラミアンは炎のような息吹を吐いて力強くこう断言した。


「信じられないかもしれないけど、僕はこう見えても薬草師なんです! 僕ならそんな道端に生えている雑草よりも効く薬をすぐに作れます! 間違いなくその不幸なご令嬢を救うことが出来る! どうかその家の場所を教えてください!」


「ケッ、何で見ず知らずのお前さんにそんなことを教えなきゃいけねえんだよ! だからママじゃなくておばちゃんのおっぱいを……」


「もしうまくいったなら、必ず皆さんに謝礼をお渡しします! 信じてください! お願いします!」


「お、おい、そう慌てるなよ。まあ落ち着け」


 氷山をも溶かしそうなラミアンの熱意は酒場中に伝播し、周囲も何事かとざわつき始めたため、野郎二人もようやく態度を少しばかり軟化させ、彼とはっきり向き合った。

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