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カルテ483 エターナル・エンペラー(後編) その51

 彼女の声は先ほどまでの口調とは全く違い、聞く者の臓腑を鷲掴みにする真剣さが宿っていた。


「ど、どうしたんだよラベルフィーユ。君の作ってくれたお弁当なら鞄に入れたし、昨日の晩よく確認したから忘れ物は多分ないと思うよ。お節介焼きだなぁ、もう。僕もいつまでも子供じゃないんだからさ」


 なるべく軽い感じで返すラミアンだったが、彼女のただならぬ気迫に圧倒され、顔は緊張感でいっぱいで言葉とは裏腹だった。


「あなたがどれだけお爺ちゃんになってもいいし、どんな変わり果てた姿になっても構わないから、絶対ここに帰ってきてね。私は人間のあなたよりもずっと長生きだから、いつまでもずっと待っている。だから絶対、絶対戻るって約束して!」


 ラベルフィーユは今まで堪えていた想いを堰を切ったように口から溢れさせて、ラミアンの心をいっぱいに満たした。


「ハハ、白髪がこれ以上増える前には必ず帰ってくるさ。約束する。大丈夫だって、相変わらず心配性なんだから」


「お願いよ! あなたが決して忘れないように、これを渡しておくわ」


 言い終わるな否や、彼女は新雪のように白いうなじに手を回すと、カチリと音を立て、首から下げていた鎖を外した。その先には緑色の宝石が飾られていた。


「これは孔雀石の中でも特別に美しい輝きを放つ石を名人が加工した貴重な物で、亡くなった母親から貰ったの。私の代わりに大切に持っていてね」


「そ、そんな大事な物、受け取れないよ!」


「別にあげるわけじゃないわ。預かっておいて欲しいの。いつか帰ってきたときに、『待たせたな』って笑って私に返しなさい。これは絶対命令よ。さもないと……」


「その先は知ってるよ! 四肢を切断して身体の首から下を地面に埋めてアロフト村長特製の全身の皮膚がずる剥けになる毒液を隙間に流し込んでそこにありとあらゆる毒虫を注ぎ込むんだろ!? わかったよ! 常に身に付けておくよ!」


「あら、ひょっとして暗記しちゃったの? フフフ……」


 ようやくラベルフィーユの顔に笑みが戻ると、彼女は昔よくやったように、今や自分よりも背の高くなった青年を抱き寄せ、その柔らかな髪の毛を撫で回した。

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