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カルテ477 エターナル・エンペラー(後編) その45

「人ノ話ヲ邪魔スルナ劣等種ドモ。イイカ、更ニ後ノ時代ニコノ場所ヲ墳墓トシテ利用スル者タチガ現レタ。最初ハ運命神ノ信者タチダケダッタガ、コノ坑道跡ニ安置スルト遺体ガ腐敗シニクイコトガ判明シタタメ、徐々ニ様々ナ者タチガ永遠ノネグラトスルヨウニナッタノダ」


「なるほど、それでこの格好でしたか。小水じゃなかった小生もようやく腑におしっこじゃなかった落ちましたよ」


「ダオニール、あなたもいい加減に黙りなさい。私もさっきから突っ込みの連続で疲れてきたのよ!」


「は、はい……」


 殺意を露わにした鬼の形相のルセフィに対し、人狼は大人しく従った。


「モウシバラク行ケバ何トカナルカラソレマデ我慢シロ、オ漏ラシ野郎ドモ」


「ああ、待ってください! ていうかまだ漏らしてませんよおしっこおおおおおお!」


 散乱した木片や布切れを踏みつけながら青ローブがズンズンと先を行くため、漫談状態だった七人も列を整え後を追う。陰々滅々とした物言わぬ死者の集団は、先ほどの動き回る死体の軍団より静かだが、異なる性質の恐怖感を煽るため、皆なるべく周囲を見ないように黙々と邁進した。特にフィズリンなどは完全に目を瞑ってしまい、前のダオニールの尻尾を掴んでいる有様だった。時々棺の中からゴトッという音が響くたびに、彼女は言葉にならない悲鳴をあげ、そのたび毎に哀れな人狼は尻尾をきつく握られたためか、キャイーンとまさに野良犬のごとく絶叫していた。


「おっ、ようやくお終いですかね」


ダオニールの言う通り、永遠に続くかに思われた死のゾーンも、気がつけばようやく通り抜けていたので、一同は深呼吸し、空気をあたかも美酒のごとく心行くまで堪能した。


「フーッ、息苦しかったわー。もういっそのこと全部ゾンビ化しちゃってどっかに移してほしいわー」


「いや、それはそれで問題があると思うぞ。やはり死者は明らかに眠らせてやるべきだ」


 ミラドールが至極真っ当な意見を述べる。


「ソレハドウカナ。現世ニ未練ヲ残シタ者タチハ、タトエドンナ形デアロウトモ生ニシガミツキタイモノダ。ソレヲ生ト呼ベルノカドウカマデハ知ラナイガ」


 ローブを翻してくるりと振り返った案内人が、意味深な台詞をあたかも死者たちの代表のように述べたので、皆何とも言えない空気となった。

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