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カルテ475 エターナル・エンペラー(後編) その43

「ミオは徐々に季節の花がしおれるように衰弱していき、満足に歩くことも出来なくなった。私は付きっきりで看病するも焼け石に水で、何一つ好転することはなかった」


 瞳はあらゆる負の感情にまみれているが、反面割と冷静だった村長の声に震えが走る。世界の終りのごとく重苦しい雰囲気の中、刻一刻、時間だけが足早に過ぎていった。


「それで5年だったんですね、僕の滞在期間が。でも、そういうことなら最初に教えてくれてもよかったのに……」


 何とかラミアンが口を挟むも、村長はわずかに目の動きで答えるのみだった。今更わかりきったことを聞くなというニュアンスなのだろう。確かにあの時点で今の話を聞いても、若くて無理無茶無謀だった少年の彼なら、そんな忠告は歯牙にもかけなかったであろう。


「やがて命のロウソクがごくわずかとなり、いよいよ今日明日という時になって、彼女は苦しい息の下から私に奇妙な頼みごとをした。何だかわかるか?」


「「えっ?」」


 突然質問を振られ、二人は顔を見合わせた。人間の女性が今わの際に何を村長に託すというのだ?


「亡くなった後、自分の遺体を故郷に届けて欲しい、とかでしょうか……?」


 おずおずとラベルフィーユが挙手するも、村長は緩やかに首を横に振る。


「外の世界が血で血を洗う争いで満ち溢れていたあの頃、そんな願いは端から実現不可能だと彼女自身もよくわかっていた。たとえもしそう願っていたとしても、決して口には出さなかっただろうな」


「はい……ですよねぇ」


 あっけなく負けを認めたラベルフィーユは若干悲しそうに引き下がる。


(どこか……どこかにヒントがあったはずだ)


 一方ラミアンはと言えば頭の中で今までのミオとの会話を再現し、彼女の思考に迫ろうともがいていた。謎めいたやり取りが多かったが、今振り返ってみると隠された真意が伝わってくる気がしたのだ。


『そうね、『桜の木の下には死体が埋まっている』って言い伝えは知ってる、ラミアン君?』


「!」


 舞い散る桜の花弁を身にまといながら、あの時確かに彼女はこう言った。続けて語っていたうんちくめいたことはだいぶ抜け落ちてしまったが、この文言はインパクト絶大で、ラミアンの記憶にしっかりと刻みつけられていた。

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