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カルテ474 エターナル・エンペラー(後編) その42

 シグマートが驚いたのも無理はない。なんと洞窟の両端にそって無数の棺桶があたかも棚に入りきらなかった本のごとく乱雑に積み重ねられ、ただでさえ狭い通路の幅を狭めていた。棺はどれも年季の入った物ばかりで木製が多く、中にはもろくなったせいか蓋が壊れ、中の白骨化した遺体が頭蓋骨を覗かせているものもちらほら見受けられた。


「こ、これは地下墳墓……! しかし何故こんな山奥に!?」


 符学院では並ぶ者なき優等生だったシグマートも、こんな異界のような場所については何一つ知らず、首を捻るのみだった。


「ひょっとしてここがトイレですか!? おしっこおおおおおおおお!」


「ズボンを下ろすのをやめなさい、テレミン! お願いだから正気に戻って!」


 ルセフィの必死の説得に何とか猥褻物を陳列せずに済んだテレミンだったが、目は虚ろだった。


「大丈夫ー、テレミンちゃーん。息がとっても荒いけど……あたいが楽にしてあげようかしらー?」


「いえ、結構です……ああ、棺桶が便器に見える……」


「こりゃだいぶ重症のようねー。そういえばあたいもたまに洞窟内を冒険者が探索する本を読んでいるんだけど、不思議なことに冒険中にトイレをしたくなるお話って一つもないのよねー。ダンジョンに便所を求めるのは間違っているだろうかー?」


「んなこたぁどうでもいいんじゃおしっこおおおおおお!」


 もはや限界間近の彼にはイレッサのからかいに対してうまく返すことも不可能だった。


「何だかつられて小生までもが膀胱がパンパンに膨れ上がってきた気がしますが、それはそうとご遺体の中に頂上付近で売っていたようなカルフィーナ神のお守りを身につけている方も見受けられますね」


「あっ、本当だ! あなたって余計な一言さえなければ充分知性キャラで通るのにね……」


 ルセフィが半分尊敬の、半分軽蔑の念を込めてダオニールを見つめた。


「ココハ遥カナ昔、孔雀石ノ坑道ダッタ。今ハ掘リ尽クサレテ久シイガナ」


 無愛想な案内人が突如歩を緩め、親切にもガイドをしてくれた。


「へぇ……カイロック山とおしっこじゃなかった同じだったんですねおしっこおおおお!」


「テレミン、僭越だけどあなた今すっごくバカそうに見えるから無理に発言しない方がいいわよ」


「……」


 見かねたルセフィが再び横槍を入れたため、繊細な少年は意気消沈した。

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