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カルテ461 エターナル・エンペラー(後編) その29

 無限に増殖するゾンビの群れは地の底を埋め尽くし、対処に翻弄されるにわか編成チームは徐々に疲弊しつつあった。皆自然の摂理に反するおぞましい敵に少なからぬ嫌悪感を抱いていたが、特にフィズリンのうろたえ振りはひどく、ミノタウロス戦の時はルセフィをサポートし、勝利に導いたというのが信じられないくらいのポンコツ振りで、見ていられないほどだった。


「ん……待てよ、ミノタウロスと言えば、確か……?」


「何か閃いたんですか、テレミンさん!?」


 鉄拳をふるって唯一前線で孤軍奮闘しているダオニールが、察しの良いところを見せた。


「確か、山頂付近でミノタウロスと戦った時、逃げ出した奴が置いて行った物があったけど、ひょっとしたらそいつが役立つかもしれない!」


「ええっ、それってまさか……」


 上空で聞き耳を立てていた大コウモリが、心持ち身をすくめる。まさにミノタウロス撃退の要となった彼女は、あの忘れ物のせいで散々な目に合ったため、昨日のことのようによく覚えていた。


「えーっとどこに行ったかな……ってあった! これだこれ!」


 荷物袋をゴソゴソとまさぐっていたテレミンは、目当てのブツを発見すると、勢いよく中なら引きずり出した。


「それは……水筒!?」


 人狼が一瞬動きを止め、目を細める。少年が握りしめている細長い筒状の物体は、日を照り返す水面のように銀色に輝いていた。


「やめてよ、危ないじゃない!」


 ルセフィは少年のあまりの暴挙に気色ばむと、翼を羽ばたかせ、仲間たちから距離を取った。


「うん、銀製の水筒だけど大丈夫だよ、決してルセフィに危害は加えないよ。ただ、これのせいで君がしばらく行動不能に陥ったと聞いて、同じ不死生物であるならば、ゾンビにも効果があるんじゃないかと思った次第だけど……」


「同じなんかじゃないわよ! 脳の腐った連中と一緒にしないで!」


 更に機嫌を悪化させた吸血鬼の真祖が頭上で猛り狂う。完全にお冠の様子だ。


「ごめんごめん、別にそういう意味で言ったわけじゃないよ。人を魅了する美しい花だって広い眼で見ると雑草と同じ仲間だって言うようなもんだよ」


「むぅ……」


 テレミンの必死の言い訳によって、少女の怒りも何とか収まった。


「でも、それをどう使うおつもりで?」


「効くかどうかはわからないけど……こうだ! キエエエエエエエエエエエ!」


 少年は甲高い奇声を発すると右手に握りしめた銀の筒を腐った死体目がけて振り下ろした。

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