カルテ458 エターナル・エンペラー(後編) その25
「もうこの際皆さんにもお告げの中身を教えちゃってもいいよね、ルセフィ? 情報を共有しておきたいし、お知恵を拝借したいんだ」
「まあ、仕方ないわね。このままこうしていても進展しないし……」
というわけで、テレミンはファロム山山頂のお告げ所で賜った宣託の内容を、その場にいる全員に大声で告げた。
『赤き夜、青き地の底に新たな出会いあり。細き蜘蛛の糸の先に骨に守られし黄金の蝶羽ばたけり。その謎を解きし時、捕らわれし不死の翁へ至る道、開かれん』
「なんか意味不明な箇所が多いわねー。そういえばお告げ所の近くにお告げをわかりやすく解説してくれるっていう解読屋のお婆ちゃんがいるって噂を聞いたことあるけど、ちゃーんと聞いてきたのー?」
イレッサの指摘に、ルセフィ側の4人全員の表情筋が苦み走った。
「もちろん寄ってきましたよ。ウサギさんの時にも揉めていたので一抹の不安はあったのですがなんだかんだで当てられましたからなぁ、ねぇ、テレミンさん?」
「そうですね、ダオニールさん……でも、想像以上にひどかったですね……」
「そうですよ! モガモガ言うだけで何のことかさっぱりわからなかったし……あそこって実は姥捨て山じゃないんですか?」
「フィズリンさん、それは少し言い過ぎかと……」
「なによムッツリ人狼! 老婆にまで興味あるんですか!? 加齢臭が好きなんですか!?」
「まあまあ、二人ともおよしなさい。結局山の下の方を指し示すぐらいはしてくれたでしょう?」
「でもお金払ったのルセフィさんですよ?」
「そういえばそうだったわ……金返せババア!」
フィズリンの余計な一言で不快な記憶を呼び覚まされた吸血鬼少女は突如語気を荒げ、貴族の令嬢に似つかわしくない暴言を吐いた。ちなみにテレミンはどこぞの穴兎族の若者と同じ台詞だなぁと気づいたが、火に油を注ぐのは嫌なので敢えて黙っていた。
「あーら皆さんお気の毒に。あたしだったらお婆ちゃんだって頑張れば守備範囲だから、うまいこと色仕掛けでねっとり聞き出せたかもしれないのにねー」
「黙れモヒカンモンスター!」
「そいつは放っておけ、ルセフィさん。下手に相手をするとどんどん奴のペースに巻き込まれるだけだ」
ミラドールが優しく怒れる少女の肩に手を置いて憤激をいなした。




