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カルテ440 エターナル・エンペラー(後編) その7

 網膜を焼き尽くすかのような閃光の眩しさに目をギュッと閉じていた二人が薄っすらと瞼を開けると、もう誰も立っておらず、その代わりそこには雪の塊から直方体に切り出したような、かつて見たこともない様式の二階建ての白い建物が、舞台からはみ出さんばかりに舞い落ちる桃色の花弁を避けて鎮座していた。


「こ……これって……いわゆる、白亜の建物ってやつですよね……」


 先に正気を取り戻したのは、意外にもラミアンの方だった。いろんな不思議な目に合ったため、超常現象に対する免疫が構築されてきたのだろうか。


「ま、まさか……本当に現れるなんて……」


 ようやく口を開いたラベルフィーユは半信半疑の様子だったが、伝説の内容を思い出したのか、綺麗な眉を引き締めた。


「行きましょう、ラミアンさん。白亜の建物がこの世界に存在している時間はわずかだと聞いています。消えないうちに早く!」


 そういうなりラミアンの手を掴むと、入り口と思われるビドロ製のドアに向かってズンズンと歩き出した。


「はいはい……」


 ラミアンも心中は戸惑っていたが、促されるままに痺れる手足を動かしてゆっくりと歩を進める。感覚が異常になっている手にもエルフの娘のぬくもりがしっかりと伝わってきて、彼に未知なるものに対する勇気を与えてくれた。そんな微笑ましい彼らの前を、あの金色の蝶が花びらに紛れて漂っていた。



「へーっ、エルフのお嬢さんですかー。初めてお目にかかりましたよー。まぁ、こちらに座って座って」


「は、はぁ……」


 診察室に入ってラベルフィーユが種族名を名乗った途端、モジャモジャ頭の本多という名の医者は、病人の野郎のことなんぞそっちのけで患者用の椅子を勧めるため、彼女はどうしたものやらと迷いつつも、勢いに負けて仕方なく腰を下ろした。意外と押しに弱いタイプだったのかもしれない、とほったらかし状態のラミアンは側に突っ立ちながら思った。


「予想通りお美しいですねー。こっちの世界じゃエルフは森に住むからエルフ=猿説なんてものも昔はあったくらいですがねー」


「……えっ、今なんて言われました?」


「おおっと、こりゃまた口が滑って失礼しました! 何でもないです!」


「……」


 のっけから会話の雲行きが怪しくなってきたため、ラミアンはちょっとハラハラしながら二人を見守っていた。

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