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カルテ439 エターナル・エンペラー(後編) その6

「どうやら隠し事があるのはお互い様だったようですねぇ」


 ダオニールがその光景を眺めながらフッと犬のように黒い鼻先を鳴らす。


「あれ、でも、ルセフィは……?」


「私ならここよ、テレミン」


「えっ!?」


 ダオニールの逞しい肩から滑り降りたテレミンがふり仰ぐと、ちょうど目の上に銀の砂粒のごとき天の星々を遮る黒い影が優雅に舞っていた。


「こ……今度は喋る大コウモリだと!? 私は落ちた拍子に頭でも打ったのか……?」


 せっかく立ち上がったばかりのミラドールが、またもや腰を抜かさんばかりに驚きの声を上げる。


「やれやれ、これはちょっと話し合いが必要なようですね……」


「ええ……」


 わりかし冷静なテレミンとシグマートは同時に深いため息をついた。そんな青い氷の底の一同を、はるか上空の赤い光が煌々と照らしていた。



「……というわけでルセフィは吸血鬼に転生し、生き別れたと思しい彼女の母親を探して、僕たち四人は旅をし、ファロム山くんだりまで来た、というわけです」


「「「……」」」


 テレミンの長い長い話が終わると、シグマート側の3人はしばし呆然としていた。ルセフィ一行の数奇な運命に思いを巡らせ、しばし言葉を失っていたのだ。もっともルセフィの母親が伝説の魔女ことビ・シフロールであるなどの重要な情報は念のため伏せてあった。彼女が様々な国家や組織につけ狙われる人物であるため、万が一を期しての事であった。


「……じゃあ、あなた方も白亜の建物と遭遇したことがあるわけですね?」


 黒ローブ姿の護符師の少年が冷気で凍りつきそうな沈黙を割る。


「ええ、そういうことです。つい調子に乗って偽物まで演じちゃいましたけどね。ちなみに私が看護師役でしたよ。ハハハハ……」


 人狼が人を飲み込めるほどの大きな口を開けて愉快そうに笑う。


「に、偽物だと!?」


「もう大変だったんですよ。うちの病気の妹を騙すため、仕方なかったとはいえ……」


「それにしても無理がありすぎるんじゃないの~、さすがに」


「……設定ミスは認めます」


 そこにミラドールやフィズリン、イレッサも加わり、神秘的な氷の大回廊にしばし明るい会話の花が咲いた。

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