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カルテ435 エターナル・エンペラー(後編) その2

「やめてください、イレッサさん! 確か閉鎖された場所で必要以上に燃やすと危険だと聞いたことがあります!」


 博学少年のテレミンが緑のトサカを引っ張らんばかりに詰め寄った。


「確かにこれ以上火遊びするのはちょっと危なそうね……あなたとなら火遊びしたいんだけどね、テレミンちゃーん」


「こんな時に余裕だな! くそ、ここじゃクロスボウがろくに役に立たない!」


 美しき白金の髪を束ねて戦闘スタイルにチェンジしたミラドールが、ゆらりゆらりと影絵のように徘徊するゾンビ軍団を睨みつけながら舌打ちする。自慢のメインウェポンも洞窟内ではいささか分が悪かった。


「しかし困ったな……僕も現在使えそうな護符があまり無いし……こんなことなら封呪してくれば良かった……」


 腐れモヒカン頭の背後でシグマートが、ローブの懐から札を取り出しつつ嘆息する。


「そういやさっきの突風を魔法として覚えたんで、こいつらに試してみてもいいかしら、シグちゃん?」


「いいですけど、一時しのぎにしかならないと思いますよ、イレッサさん。ゾンビがその程度で動けなくなるはずないですし」


「んも〜、冷たいわね〜、何かいい手はないの、テレミンちゃんの方は?」


「うーん……」


 テレミンは頭を抱えた。今のところ実際に戦っているのはダオニールとイレッサぐらいのもので、戦力外の人間が多過ぎ、しかも敵は疲れ知らずの不死身の軍隊なので、作戦を立てるのが非常に厄介だ。一発で状況をくつがえすアイデアが全く浮かんでこない。


「何か強力な護符でもあれば何とかなるかもしれませんが……蜂の護符以外にも何か実家からくすねてきてないんですか、フィズリンさん?」


「そうホイホイ貴重なものが家に転がってるわけないじゃない! そんなことより化け物ががががががががががが」


 ゾンビよりも発語機能を失いつつあるフィズリンは、怯えて彼の服の裾にしがみつくばかりだ。普段の優秀さはどこかへ旅立ち、何か役に立つ素振りすらない。


「はぁ……なんでこんなことに……」


 テレミンはフィズリンをなだめながら、先ほどクレバスから地底に転落した後、お告げの言うことに従ってこんな場所に入り込んだことを、心底後悔していた。

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