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カルテ425 幸運のカルフィーナ・オーブの災難(前編) その16

「えー、ついでに付け加えますと、飛び出しナイフ部門では100年程前にアメリカ人の水夫が仲間と一緒にサーカス見た後酒場で、『俺にもあれくらいできらあ! 船中のナイフ全部持ってこーい!』って威勢よく啖呵を切って大量の飛び出しナイフを飲み込んだのがチャンピオンですね。この人こんなことを何回も繰り返して、当然のごとく体調悪化するも医者にそんなバカな話を信じてもらえず、ナイフの破片が血と一緒に口から出てきてようやく治療にあやかるもどうすることも出来ず、お亡くなりになりました。死後遺体解剖されたところ、おびただしい数の刀身、スプリング、柄などのパーツが見つかったそうですよ。何でも総計30本以上のナイフを嚥下したそうですから、相当痛かったでしょうね……南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


「グガガガガッ!」


 酒の席での過ちが両手の指では足りないほどあるエリザスは、辛い過去がフラッシュバックしてえずきそうになった。


「本多先生、それ以上はもはや本当に拷問ですよ。先生ご自身だって今でも出身校で語り継がれる酒宴の席での武勇伝がさぞかし沢山あったでしょうに」


「ぐげげげげっ!」


 それこそナイフのような切っ先鋭い辛辣な言葉がセレネースの口から発射され、本多の胸に突き刺さる。


「痛い、痛いよ! ごめんなさいセレちゃん! もう飲み会には金輪際行きたくないよ! あそこは親睦を深めるという名目の人間公開処刑場だよ! うがあああああ! まつたけ酒! ちょんまげ! たけのこ尿器!」


(おいおいおい、ちょっとやめてよ!)


 学生時代の古傷を的確にえぐられた主治医が前触れもなく不穏化したため、現在まな板の上状態であるエリザスは気が気でなく、不安がこみ上げてきてまたもやメデューサに変身してしまいそうな気分になったほどだった。


「やれやれ、仕方のない方ですね。あなたはバカルサンチマン大学生なんかじゃなくてもう立派なお医者様なんですから落ち着いて下さい、ドクター」


「うう、そうだった……未だに追試の夢しか見ないから、つい学生気分に戻っちゃうんだよ。ふぅ、深呼吸、深呼吸っと」


(……ホッ)


 ようやく本多の精神状態が安定したため、命の瀬戸際だったエリザスは心中胸をなで下ろした。

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