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カルテ424 幸運のカルフィーナ・オーブの災難(前編) その15

「グガ」


「おっと、だから一々返事しなくてもいいですよ、お嬢さん。さて、異物の嚥下として、割とオーソドックスなところでは、1939年アメリカって自由の国のハーバード大学の学生の余興から始まったといわれる金魚呑みってのが有名ですね。最高記録は89匹とも210匹とも言われますが定かではありません。結局最終的には大学側に禁止されてしまいます。因みにハーバード大学では毎年二回期末試験前夜学生の有志が男女共に全裸で学校を2周するという非常にアレな伝統行事があるそうですよ。


 まあ、かく言うこの僕も学生時代は人には言えないようなことばかりしてきましたけどね。ハロウィンの夜にまだコスプレが一般的でないのにゾンビコスしたついでに解剖実習室の人骨模型持ち出して肩組んで街に繰り出すとか、卒業式にカウボーイハットと古いカーテンを密かに持ち込んで、後ろの席の奴が、『やめてください、本多さん!』と忠告するにも関わらず某銀河鉄道の主人公のコスプレを瞬時にして卒業証書貰うとか、若さゆえの過ちのオンパレードでしたが、さすがに人間ポンプの真似事なんぞはしませんでした。喉に鱗が当たりそうだし……」


「グゲ……」


 名調子の本多の独演会を拝聴しているうちに、エリザスは胃の中で大量の小魚がひしめき合っている感覚に襲われ、呻き声を上げた。


「まあ、他にもとんでもない代物を飲み込んだ例は多々あり、枚挙にいとまはありません。最古の例では、腹痛を起こした修道士が何とかしようと思い、何故か香水瓶を丸呑みしたケースもありますよ。でも、危険度で考えるならばナイフが一番ヤバいですね」


「!」


 突如本多が理解不能な単語を持ち出したため、エリザスは耳がどうかしたのかと疑ってしまった。


「例えば400年程前、医学会における最も衝撃的な事例として、全長17cmものナイフが消化器内に入ってしまったプロイセンって国の若い農夫の話があります。彼は前日の酒が抜けず吐きたい気分だったので、自分の愛用のナイフの柄で喉奥を突いて刺激しようとして、誤ってナイフが胃まで滑り落ちてしまい、医師に左脇腹を切開され、何とか取り出すことが出来たのです。彼は術後も無事で平和に暮らし、くだんのナイフはビロードのバッグに保管され、時のプロイセン王の所蔵品となったそうで、その後ライデン大学の所有となりましたが、残念ながら現在では行方不明となっています。やっぱりウゲーって嘔吐したい時はナイフの柄なんかじゃなくって己の指でやるべきですよねー」


「……」


 二日酔い常習犯の駄目デューサにとっては酷な話であった。

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